投資をする目的はさまざまですが、ゆくゆくは働かずに「不労所得」だけで生計を立てたいと思って投資をしている方は多いのではないでしょうか?
不労所得を狙う投資家に人気の商品に、「REIT(リート)」があります。
少額の投資でもたくさんの分配金をもらえるため、投資で生計を立てたい投資家に人気があります。
しかし、投資にはリスクがつきものです。
この記事では、REITへの投資を考えている人のために、どのようなリスクがあるのかについて解説していきます。
筆者もREITに投資しているため、リスクだけでなくメリットやREITの選び方も紹介していきます。
目次
筆者のプロフィール
ファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つ、金融機関出身のライターです。
投資歴は4年、運用資産は1,000万円に突入し、毎月約2万円以上の不労所得が入ってくるようになりました。
読者の方々の老後の豊かな暮らしや早期リタイアをサポートするため、金融や投資の記事を多く執筆しています。
REITは分配金利回りが高いため、少額の投資でも多めに不労所得を得られます。
筆者もREITに投資しており、ぜひメリットをお伝えしたいです。
この記事ではREITのリスクを中心にお伝えしますが、メリットも多いことをご理解いただければと思います。
REITとは
REIT(リート)は投資信託の一種で、大勢の投資家から少しずつ集めた資金を、投資会社が代わりにまとめて運用する仕組みの商品です。
運用で得られた利益は投資家に還元されます。
REITの投資対象となるのは、不動産のみです。
一般的な投資信託だと、株式や債券などをメインに運用する商品が多いですが、REITは不動産のみに投資する点に特徴があります。
不動産投資で得られる収益には、「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2種類があります。
キャピタルゲインは、不動産を安く買って高く売った差額が利益となります。
インカムゲインは、賃貸住宅やオフィスとして貸し出し、賃料を利益とします。
多くのREITは、安定したインカムゲインで稼ぎ、機会があればキャピタルゲインを狙って行くという運用方針です。
REITの7つのリスク(デメリット)
REIT(リート)は投資なので、元本割れのリスクがあります。
100万円投資したからといって必ず120万円などプラスになるとは限らず、80万円などマイナスになってしまうこともあります。
元本割れする原因は、主に次の7つです。
元本割れする原因となるリスク
- 価格変動リスク
- 不動産市場のリスク
- 金利変動リスク
- 災害リスク
- 上場廃止リスク
- 投資会社の倒産リスク
- 法改正によるリスク
7つのリスクには、気にしなくて良いような小さいものから、対策を取るべき大きなリスクまでさまざまです。
特に、災害リスク、上場廃止リスク、倒産リスクはリスクを低く抑える投資方法で対策できます。
対策については後述するので、まずはREITにはどのようなリスクがあるのか具体的にお伝えしていきましょう。
1.価格変動リスク
REITは株式と同じように証券取引所で売買され、時々刻々と価格が変動します。
1日で1パーセント以上の値動きがあることもあるのです。
高値でREITを買ってしまうと、その後に価格が下がって元本割れする可能性があります。
つまり、REITは日常的に価格変動する商品なので、「絶対に元本割れしないように運用すること」は基本的には不可能だと思ってください。
とはいえ、日常的な値動きは大きくても3パーセント程度のものなので、あまり気に病む必要はないでしょう。
これから解説するような大きなリスクが発現すると、5パーセントから10パーセントもの値動きをすることがあるので、これ以降のリスクについて理解を深めていただければと思います。
2.不動産市場のリスク
不動産の賃貸市場や売買市場が変化すると、REITの収益性が悪くなることがあります。
過去の成績よりも収益性が悪化すれば、その銘柄を見限って売却する人が増え、REITの価格の下落につながります。
よって、REITに投資している投資家の資産も減少してしまいます。
賃貸の需要が減ると、インカムゲインが少なくなってしまいます。
また、売買市場が変化して不動産の価値が下がれば、REITの資産の評価額が減ります。
ただし、賃貸市場や売買市場が良くなって収益性が上がることもあります。
不動産市場は悪くなるリスクだけでなく、良くなって収益性が上がることもあるため、市場の変化は怖がれば良いというものではありません。
3.金利変動リスク
REITは投資家からお金を集めてそれを元手に運用していますが、投資家からのお金だけでなく金融機関からも借り入れているケースがあります。
その場合、住宅ローンなどと同様に、投資会社は金利を乗せて返済します。
そのため、金利が変動すると返済額が大きくなって収益性が悪化することがあります。
金利が高くなると借り入れの返済額は大きくなりますが、金利が低くなれば返済額は小さくなり収益性が良くなります。
つまり、金利変動もリスクとなるだけでなく、場合によってはメリットにもなり得るということです。
近年、日銀がマイナス金利を導入するなど低金利の状態が続いており、またコロナショックへの経済対策で低金利が保たれると予想できるため、今すぐに「金利が高くなったらどうしよう」と怯える必要はあまり無いと言えます。
4.災害リスク
不動産は地震や洪水などの自然災害や火災によってダメージを受けると、利益を生めなくなってしまいます。
資産価値がなくなってしまうため、REITが値下がりしたり分配金が減ったりする可能性があります。
建物へのダメージは損害保険で補償されますが、一度被災した不動産が収益を生める物件に生まれ変わるまでには時間がかかります。
日本は災害大国で地震や洪水が頻発していることからもわかるとおり、日本のREITにとって最大のリスクが災害リスクと言えるでしょう。
5.上場廃止リスク
証券取引所に上場しているREITが、上場を維持するための基準を満たせなくなると「上場廃止」となってしまいます。
これを上場廃止リスクと呼びます。
実際には、いきなり上場廃止になるのではなく、一定期間は整理ポストに入れられてからです。
REITを保有する投資家は上場廃止までに銘柄を売却するのですが、その頃には大きく値下がりしている可能性が高いです。
上場廃止となる基準については、各証券取引所が定めています。
東京証券取引所の場合、「純資産総額が5億円未満となった場合において、1箇年年以内に5億円以上とならないとき」などの基準を定めています。
これらの基準をクリアできない場合、そのREITは上場廃止となってしまいます。
6.投資会社の倒産リスク
投資家からお金を預かって運用する投資会社が倒産した場合も、元本割れする可能性が高いです。
倒産した場合も不動産の価値がゼロになることはないため、売却したお金のいくばくかは投資家に返されると考えられますが、大金が返ってくることはあまり期待できないでしょう。
また、投資会社が破産や再生手続きをする場合、上場廃止にもなります。
実際、2008年にはニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生手続きを開始し、東京証券取引所が上場廃止とした例があります。
7.法改正によるリスク
REITに関する法改正や建築関連の法改正により、REITの収益性が悪くなることがあります。
これを法改正リスクと呼びます。
法改正によって、これまで問題なかった運用に規制がかかると、収益性が悪くなることがあります。
また、資産の評価方法などが改正されると、REITの資産が変動して値下がりすることもあります。
法改正リスクはREITだけでなく他の投資商品にもあり、残念ながら備えようがありません。
しかし、法改正や規制の強化は投資環境を良い方向に導くためのものです。
グレーゾーンだった部分に白黒がはっきりつけられるようなイメージであるため、投資業界の健全化といったメリットもあります。
REITが人気の理由(メリット)
REITのリスクを紹介してきたので、「こんなにたくさんのリスクを背負ってまでREITに投資するべきなのか?」と思ってしまう方も多いと思いことでしょう。
しかし、REITには分配金利回りが高く、少額で不動産投資ができるといったメリットもあるのです。
この項目では、リスクを取ってでもREITに投資するべき理由について解説していきます。
次の5つのメリットを紹介していきましょう。
REITのメリット
- 分配金利回りが高いから
- 少額で不動産投資ができるから
- 投資のプロに運用を任せられるから
- インフレに強いから
- 換金しやすいから
理由①:分配金利回りが高いから
REITは分配金利回りが高く、4パーセントから6パーセントにも上ります。
100万円をREITに投資すると、分配金として1年間に4万円から6万円ほどもらえるということです。
他の商品の場合、債券の金利は1パーセント前後、株式の配当金利回りは1パーセントから4パーセント程度です。
REITの分配金利回りの高さがご理解いただけるでしょう。
分配金は、銘柄を保有しているだけでもらえる不労所得です。
REITが投資の不労所得で生計を立てたい投資家に人気なのは、分配金利回りが高いからです。
不労所得や年金代わりの資産形成を目的に投資をするなら、REITがおすすめです。
理由②:少額で不動産投資ができるから
不動産投資するには、不動産を1部屋以上買わなければならないため、数千万円から数億円といったお金がかかります。
ですが、REITなら数万円から数十万円で投資を始めることができます。
少額で不動産投資ができるのは、REITのメリットです。
しかも、個人では所有しにくい都心のオフィスビルに投資することもできます。
したがって、不動産投資をしてみたいけど、大きなお金はないしローンも組みたくないという方にはREITがおすすめです。
理由③:投資のプロに運用を任せられるから
REITは、投資会社に在籍するプロが投資家の代わりに不動産投資をする商品です。
すなわち、プロに任せられるというメリットがあります。
投資をプロに任せられるため、投資家が不動産の売買をしたり賃料の回収をしたりする必要はありません。
また、初心者の投資家でもプロ並みの成果を得られる特徴もあります。
自分で運用する手間もかからず、プロの力を借りられるのがREITです。
特に初心者の方で自力で資産運用する自信がない方には、ぜひREITを活用していただきたいです。
理由④:インフレに強いから
インフレに強い資産の代表格といえば、不動産です。
一方、現金はインフレに弱い資産であるため、資産の一部を不動産やREITで運用することで、インフレに備えることができます。
では、なぜ現金はインフレに弱いのか説明していきましょう。
インフレとは、物価上昇のことです。
物価上昇率が2パーセントの場合、いま100万円で買える車が1年後には102万円になっています。
いま100万円の現金は運用しない限り100万円のままです。
いまなら100万円で車を買えたのに、1年後には2万円足りず買えなくなってしまいました。
この例のように、物の値段が上がるスピードに現金は置いてけぼりにされるので、インフレが起こると「現金の価値が相対的に下がる」と言われています。
日本の物価上昇率の目標は2パーセントです。
これが実現できた場合、利回り2パーセント以上でお金も運用しないとお金の価値が下がっていってしまいます。
不動産がインフレに強いのは、不動産の価値や賃料もインフレによって上がることが多いからです。
理論的には、物価が2パーセント上がるなら、不動産の価値や賃料も2パーセント上がります。
これなら、資産価値が物価に置いてけぼりにされず、インフレに強い資産形成ができるのです。
理由⑤:換金しやすいから
不動産とREITの最大の違いは、換金のしやすさです。
REITは証券取引所で売買できるため、基本的には「売りたい」と思ったときに売ることができます。
現金が必要になったら、自由に換金できるのです。
一方、不動産は売りたいと思ってもなかなか売れないことが多いです。
買い手を見つけたり必要書類をそろえたりと、時間と手間がかかるからです。
手軽に換金できる点では、REITに軍配が上がります。
REITの選び方
REITにはさまざまなリスクがあるものの、分配金利回りが高いなどのメリットがあります。
不労所得を目的に投資をしたい人には、ぴったりの商品だと言えるでしょう。
しかし、メリットが大きいからと言ってリスクに目をつぶることはできません。
ここでは、低リスクなREITの選び方を紹介していきます。
REITを購入する前に、次の3つのポイントを満たしているか確認しましょう。
REITを購入する際のポイント
- 分配金利回りだけで判断しない
- 投資先が分散している商品を選ぶ
- 時価総額が大きい
選び方①:分配金利回りだけで判断しない
分配金利回りが高いREITに投資したいと思うことは当然ですが、分配金利回りだけで銘柄を判断することは危険です。
7パーセント超えの銘柄や、時には10パーセントにも迫る銘柄もありますが、分配金利回りが高い銘柄が良いとは限らないため注意しましょう。
分配金利回りが他に比べて極端に高い銘柄は、リスクを取り過ぎている可能性があります。
これから説明する2つのポイントも参考にして、低リスクに運用できるREITを選ぶと良いでしょう。
選び方②:投資先が分散している商品を選ぶ
REITの投資先は不動産ですが、不動産にもさまざまな種類があります。
投資先が分散している方が利益が安定しやすいため、複数の種類に投資しているREITがおすすめです。
例えば、次のようなものががREITの主な投資先です。
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2種類以上に投資している銘柄を選ぶか、1種類に投資している複数のREITに投資すると良いでしょう。
分散すると利益が安定しやすいのは、不動産のタイプによって収益の特徴が異なるからです。
例えば、2020年の新型コロナウイルス感染拡大によって外出に制限がかかったのはご存知のとおりです。
倉庫を保有する物流系のREITは、通販の需要増加を背景に注目されましたが、旅行の自粛によってホテル系のREITは見通しが暗くなっています。
このように、不動産のタイプによって調子の良し悪しが分かれるため、複数のタイプに投資しておくことで、大きな損失を食らわないようにしておきましょう。
できれば、不動産の場所も分散できるとベストです。
東京だけに集中しているのではなく、関西や中部などにも不動産を持っているREITの方が望ましいです。
どこかの地域で地震や洪水などの自然災害が起きても、すべての不動産が一斉にダメになるとは考えにくいからです。
地域を分散するのは、災害リスクを減らすのに向いています。
選び方③:時価総額が大きい
時価総額もREITを選ぶポイントとして重要です。
倒産リスクや上場廃止リスクを下げられるからです。
時価総額は、1,000億円以上を目安に選ぶと良いでしょう。
資産規模が大きいほど多くの投資家が投資しており、また金融機関などの機関投資家も参入していると考えられます。
簡単には倒産しにくいと予想できるため、1,000億円以上を目安に時価総額が大きいREITを選ぶことをおすすめします。
まとめ
REIT(リート)のリスクを中心に、REITに投資する理由や選び方のポイントを解説しました。
価格変動リスクや不動産市場リスクなどがあるため、REITは元本割れのリスクがある商品です。
しかし、リスクを取ってでも投資するべき理由がある商品です。
分配金利回りが高いため、不労所得を狙う人には特におすすめの商品です。
今回紹介した選び方を参考にして、REITへの投資を検討してみてください。