新型コロナウイルスの流行によるコロナショックは、2008年のリーマンショック以来の大きな影響を日本経済にもたらしています。
そんな状況下では、どういった投資手法を選んだら良いのか迷っている方もいるかもしれません。
一方で、すべての投資手法が大きな影響を受けているわけではなく、中には影響が軽微な投資手法もあります。
そのうちの一つがソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングです。
そこで、ここではコロナショックが日本経済に与えた影響について解説し、コロナ禍におけるソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングにおける案件の選び方のポイントを解説します。
投資先を選ぶ際の参考にしてください。
目次
コロナショックが日本経済に与えている影響とは?
まずは、各投資市場における、コロナショックの影響を確認していきましょう。
2020年2月に始まった新型コロナウイルスの流行は、日本経済にどのような影響を与えていったのでしょうか?
株式市場
経済の状況を測る指標としてよく使われるのは、株式市場、特に日経平均株価です。
2019年10月から2020年10月までの日経平均株価の推移は次のようになっています。
出典:SBI証券
2020年に入り、新型コロナウイルス流行前、2020年2月13日(木)の日経平均の最高値は23,827円でした。
そのわずか1ヶ月後である2020年3月19日(木)には、日経平均株価は16,552円まで下落しています。
その後は下落の反動か、徐々に日経平均株価も回復傾向にあり2020年10月9日(金)にはコロナショック前の水準に近い23,600円まで値を戻しています。
その後も堅調な推移が続いており、株式市場は影響が大きかったものの、回復しつつあると言えます。
不動産市場
続いては、不動産市場について確認していきます。
不動産は株式市場と比べると流動性の低い市場と言われています。
オンタイムでの売買ができないからです。
そのため、株の下落などから不動産に影響が出るのは半年後と言われています。
まさにコロナショックの半年後である2020年8月の東京の不動産市場から、影響が出始めました。
不動産仲介業を展開する三鬼商事株式会社の調査結果によると、2020年8月の東京のオフィス賃貸相場は80ヶ月ぶりに低下しました。
東京都心のオフィス空室率は3パーセントを突破しており、空室率・賃料相場ともに数年続いていた上昇傾向から下落に反転しました。
同社の2020年9月の調査結果を見ても、同じ傾向が続いています。
新型コロナウイルスの不動産市場への影響は、今後拡大する可能性があるでしょう。
REIT(リート)市場
不動産投資信託、REIT(リート)市場の相場も確認しましょう。
REITは証券市場で売買されるため流動性が高く、コロナショックの影響が素早く発生しました。
東証REIT指数の、2019年10月から2020年10月の推移を見てみましょう。
出典:SBI証券
コロナショック前の高値は2020年2月20日(木)の2,250でした。
しかし、2020年3月19日(木)には1,145まで下落しています。
わずか1ヶ月で平均指数が半値にまでなってしまったのです。
その後は株式市場と同じく値を戻しつつありますが、株式市場と違って相場はコロナウイルス流行前の水準にまで戻っていません。
その理由として、ホテルREITやオフィスREITなどの株価が戻らないことがあげられます。
日本のホテルは海外からの観光客は、2020年10月時点ではほぼゼロであり、インバウンド需要が消え大きな売上の低下を招いています。
また、リモートワークの増加によりオフィス需要が低下しています。
この流れを解消できない限り、ホテルREITとオフィスREITの価格は上昇傾向に反転できないでしょう。
コロナショックの影響をダイレクトに受けたREIT銘柄が、REIT市場の低迷を招いているのです。
基準地価
国土交通省が毎年発表する不動産価格を示す指標の一つが、基準地価です。
2020年9月29日(火)に、2020年7月1日(水)時点の基準地価が発表されました。
その結果を見ると、国内の基準地価平均は全国平均で0.6パーセント低下という3年ぶりの下落となりました。
また、これまで毎年1パーセント以上の上昇が続いていた東京都内の基準地価ですが、2020年は0.1パーセントと伸び率が大幅に下落しています。
特に、東京都心や中央区など繁華街の基準地価は、これまでの大幅な上昇から下落に転じています。
これも、インバウンド需要がなくなったことの影響です。
海外の観光客の需要が高いエリアほど、基準地価が大きく低下していることがわかります。
総括
まとめると、株式市場への影響は限定的であり現在回復しつつあるものの、不動産市場への影響はこれから先に徐々に拡大していくことが予測されます。
ソーシャルレンディングへの影響は?
それでは、まずはソーシャルレンディングへの影響を考えてみましょう。
2020年10月時点では、ソーシャルレンディングへの大きな影響は見られません。
クラウドアンサーでは毎月ソーシャルレンディングの募集金額を集計しています。
2020年4月には前月比で大幅な下落を見せたものの、その後は回復傾向にあり2020年9月には120億円を超えるほどの募集規模になっています。
また、返済遅延や貸し倒れが発生したという報道も、海外案件以外では見られません。
ただ、2020年時点では投資家が損失を被るような事態は発生していませんが、不動産市場の落ち込みが徐々に顕在化しているため、今後は影響が出てくる可能性があります。
不動産投資型クラウドファンディングへの影響は?
ソーシャルレンディング以上に大きな影響を受ける可能性があるのが、不動産投資型クラウドファンディングです。
運用対象がすべて不動産であるため、不動産市場の下落から直接的に影響を受けます。
ただし、不動産投資型クラウドファンディングにおいても2020年10月時点では返済遅延や貸し倒れは発生していません。
運用終了後に投資家が損失を被ったという事態もなく、順調な運用が続いています。
その理由は、不動産投資型クラウドファンディングにはマンションなどの居住用物件の運用案件が多く、景気の影響を比較的受けにくいからだと考えられます。
また、CREAL(クリアル)ではホテル案件や民泊物件など宿泊施設案件が提供されておりクラウドアンサーでも実際に投資を行っていますが、こちらも順調に配当が続いており現在のところ問題が発生していません。
ソシャレン・不動産投資型クラファンで今後起こり得るリスク
2020年10月時点では、ソーシャルレンディング・不動産投資型クラウドファンディングともに大きな問題は発生していません。
不動産市場の下落はまだ発生していませんが、もし発生することがあればその影響を受けかねません。
では、不動産価格の下落や空室率の状況、家賃の低下によりどのような影響が発生すると考えらえれるでしょうか?
- 利回りや配当金額の低下
- 担保価値の低下
- 不動産投資型クラウドファンディング運用後の損失の発生
- 運営会社の倒産
利回りや配当金額の低下
まず考えられるのが、投資家への配当金額の低下です。
不動産投資型クラウドファンディングでは物件を取得し他者に賃貸に出すことで収益を出し、そして収益から投資家に配当を行っています。
もし空室が発生してしまった場合、投資家への配当を行うための原資がなくなり、入居者確保のために賃料を下げて再募集をすることが考えられます。
その場合、投資家の配当の低下は避けざるを得ない状況になるでしょう。
担保価値の低下
ソーシャルレンディングでは、融資金額の回収率を上げるために不動産担保を設定する案件が多く見られます。
貸したお金を回収できない場合、設定した不動産担保を売却することで投資家に対して資金を返済しています。
しかし、景気の影響で不動産価格が下がれば、担保価値が低下し不動産を売却しても資金を満額回収できなくなることが考えられます。
不動産投資型クラウドファンディング運用後の損失の発生
不動産投資型クラウドファンディングでは、取得した物件を運用終了後に売却し、その利益から投資家へ元本を返済します。
そのため、不動産相場が下がってしまうと売却価格が低下し、投資家に元本を満額返済するだけのお金を確保できないことが考えられます。
運営会社の倒産
不動産価格の下落が起これば、不動産会社を運営する不動産投資型クラウドファンディングサイトの運営会社やソーシャルレンディングサイトの運営会社が倒産する可能性も起こりえます。
特に、コロナショック下では「コロナ倒産」と言われるさまざまな会社の倒産が続いています。
不動産価格が下落していけば運営の不動産会社が倒産したり、売上が下がって不動産投資型クラウドファンディングサイトの運営に影響が出たりすることもあるでしょう。
コロナ禍でのおすすめの投資のポイント・リスク対策
コロナ禍の今、ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングででの投資で利益を獲得していくためには、ポイントを押さえておく必要があります。
不動産以外に投資したり、資産保全性の高い対象を見つけて投資したりといった対策が必要です。
- 不動産以外の案件に投資する
- LTVの値が低い案件に投資する
- 劣後出資割合が高い案件に投資する
- 居住用や物流不動産に投資する
- 利用サイトを分散する
不動産以外の案件に投資する
ソーシャルレンディングでは、不動産案件以外にもさまざまな運用案件があります。
太陽光発電所などの自然由来エネルギー開発案件、金融機関に対する融資資金案件、また飲食店などの運営資金の融資案件など多彩です。
融資先の事業をこういった不動産以外に分散することで、不動産市場の下落から生まれるリスクを軽減できます。
ただし、分散先もリスクの高い案件では意味がありません。
飲食店への融資はコロナ禍ではリスクが高いと言わざるを得ません。
自然由来エネルギー案件は、発電した電力を国が一定価格で買取してくれるため、景気の影響は受けにくいです。
LTVの値が低い案件に投資する
不動産担保を設定しているソーシャルレンディング案件に投資するときには、LTV(Loan to Value)の値が低い案件に投資しましょう。
Loan to Valueとは、担保に対する融資金額の割合を示す数字です。
例えば7,000万円の融資案件で、市場価格1億円の不動産担保が設定されていれば、LTVは70パーセントと計算されます。
- LTV=7,000万円÷10,000万円=70%
これは、30パーセントまでは担保価値が下落したとしても、融資金額を満額回収できるということを意味します。
例えば、LENDEX(レンデックス)では、不動産担保を設定する際には自社と不動産鑑定士といった専門性の高い事業者による二重査定が行われいます。
そして、2つの査定額のうち低い方が採用され、その金額の80パーセントまでしか融資が実行されないという仕組みです。
LTVが公開されている案件を選び、その値が低い案件を選んでいきましょう。
劣後出資割合が高い案件に投資する
不動産投資型クラウドファンディングに投資する際は、劣後出資割合が高い案件に投資してリスク対策しましょう。
劣後出資割合とは、不動産投資型クラウドファンディングの不動産購入資金における不動産会社側の出資分のことを指します。
不動産投資型クラウドファンディングの場合、不動産の購入資金は
- 投資家が出資する「優先出資分」
- 運営会社が出資する「劣後出資分」
の2つに分別管理されています。
そして、売却時の価格が購入時の価格に満たなかった場合は、劣後出資分から損失が負担されるという仕組みです。
例えば、1億円の不動産取得案件で劣後出資割合が20パーセントの場合、
- 優先出資額:8,000万円
- 劣後出資金額:2,000万円
となります。
そのため、運用終了後に不動産を売却し、1億円の案件に対して8,000万円しか回収できなかった場合、不動産会社は2,000万円の損失を被ります。
しかし、投資家は1円の損失も被らないということです。
劣後出資割合が手厚い案件を選んで投資すれば、不動産価格が下落しても損失を避けられます。
居住用や物流不動産に投資する
不景気の影響を受けにくい投資対象を選ぶことも、リスク対策では重要です。
REITの各銘柄の相場の変動を見るに、コロナショックの大きな影響を受けているのは新型コロナウイルスの流行でで利用者数が減ったホテル案件です。
一方で、物流REITはここ1年で値上がりを見せており、居住用REITの相場も手堅いものがあります。
倉庫などの物流不動産やマンションなどの居住用物件は、景気にかかわらず一定の需要があるため、手堅い投資対象と言われています。
そういった不動産に分散投資をしていきましょう。
利用サイトを分散する
投資先のサイトを分散して投資することも重要です。
景気が悪くなれば、ソーシャルレンディングサイトや不動産投資型クラウドファンディングサイトの運営会社倒産する可能性もあります。
たとえ倒産しても、投資家の資産が分別管理されていれば資産の大半は回収できる可能性が高いですが、資金の回収までに時間がかかってしまうことも考えられます。
会社によっては投資家の資産が分別管理されておらず、破産管財人によって他の債権者に対して投資家の資産が分別返済されてしまう可能性もあります。
そういった運営側のリスクを避けるために、複数のサイトで分散投資しておきましょう。
仮に10社を利用しておけば、そのうち1社で倒産が起きたとしてもダメージはわずかなものに限定できます。
まとめ
新型コロナウイルスの流行はまだ収束を見せておらず、その影響がどの程度まで拡大するかは未知数です。
早計に「新型コロナウイルスは収まったから、今まで通りに投資してみよう」と判断するのではなく、リスク対策として可能な限り投資対象を分散し、また不況にも強いと言われる投資対象を選んでいきましょう。
そのためには、多数のソーシャルレンディングサイト、不動産投資型クラウドファンディングサイトの口座開設を行い、どういった案件を取り扱っているかをよくチェックするべきです。
チェックした中で、データを見てリスクが小さいと考えられる投資対象を選び、慎重な姿勢で資産運用を行いましょう。
こちらをチェックしておいてください。
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【不動産投資型クラウドファンディング】