資産運用を行う上で欠かせない知識が「利回り」の知識です。
利回りの仕組みを理解しておかなければ、資産が増える仕組みや、目標を達成することは難しくなります。
この記事では、利回りに関する筆者の失敗談から基礎知識、資産運用別の目安について紹介していきます。
これから資産運用を始めたい投資初心者の参考になれば幸いです。
目次
筆者プロフィール
筆者は、北海道に住む30代前半のフリーライターです。
20代前半から資産運用を始めて、さまざまな種類の投資を経験してきました。
現在は、投資で得た知識と経験を活かして、資産運用や個人で稼ぐ方法を発信しています。
この記事では、資産運用における利回りの仕組みから、利回りだけでは見えないリスクの考え方までを紹介していきます。
【体験談】FXが高利回りだと思っていた初心者時代
筆者が資産運用を始めたばかりのころに経験した、利回りの知識不足による失敗を紹介していきます。
高金利FXで利回り40%以上を達成?
人気の資産運用方法である「FX」で利回り40パーセントを達成した際の話と失敗談です。
FXで取引できる通貨の種類には、利回り20パーセント以上を目指せる高金利の通貨があります。
例えば、豪ドル(AUD)やトルコリラ(TRY)などの新興国の通貨が有名です。
このような高金利通貨を日本円のような低金利通貨とペアで買うことで、金利差による年間利回り20パーセント以上を目指せるようになります。
FX取引方法や利回りなどの基礎知識もなく始めた筆者は、「高金利」や「高利回り」といった甘い言葉だけを信じて高金利通貨の取引を始めました。
利回り20パーセントでは物足りなくなり、年間利回り40%以上を目指せるトルコリラを中心に取引をするようになりました。
これが、夢の利回り40%超えを達成した瞬間です。
価格暴落で大きな含み損の発生
FXにより、ほったらかしでも利回り40パーセント以上で増えていく金利を楽しんでいた筆者ですが、実はすでに大きな失敗をしていたのです。
それは、通貨の価格変動リスクを計算していないことです。
世界中で取引されている通貨は、毎日のように価格が変動しています。
また、先ほど紹介した新興国の高金利通貨は、価格変動の値幅(ボラティリティ)が大きいことが特徴です。
そのため、買った価格よりも大きく値下がりすると、金利でもらえる利益を差し引いても損失が膨らんでしまうのです。
筆者が保有していた通貨も、大暴落の結果大きな損失を抱えることになってしまいました。
含み損となったままの通貨は、現在もそのまま保有しています。
この失敗は、事前に基礎知識を勉強しておくだけで防げるリスクです。
この記事には、筆者と同じ失敗をしないための知識とポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
資産運用における利回りの基礎知識
まずは、資産運用を始める前に知っておくべき利回り関連の基礎知識を解説しましょう。
基礎知識①:利回りとは
資産運用における利回りとは、投資した元本に対して利益や配当金が何パーセント得られるのかを表す用語です。
一般的には、月間ではなく年間の利回りを表すことが多くなっています。
例えば、元本100万円を利回り5%で運用した場合、1年後には資産が5万円増加して、計105万円になると計算できます。
投資商品を選択する場合、利回りのチェックは欠かせないポイントです。
基礎知識②:表面利回りと実質利回り
続いて、主に不動産業界で使われる用語「表面利回り」と「実質利回り」を紹介しましょう。
表面利回りとは、経費やリスクを含めない想定の利回りを表しています。
不動産においては、「諸経費を含まない」「満室を想定」「家賃の値下げも含まない」などのハッキリと断定できない数値をカットした利回りです。
主に不動産会社のポータルサイトで表示されている利回りには表面利回りを使用する場合が多くなっています。
一方、実質利回りとは表面利回りでカットされていた空室リスクや経費などを含めた利回りです。
投資家に合わせて毎月のローン返済額や修繕費用などを経費に加算していき完成させます。
資産運用を考えている方は、表面利回りだけで判断せず必ず実質利回りを計算してから投資判断を行いましょう。
基礎知識③:単利と複利
続いて、資産運用での単利と複利の違いと特徴について解説します。
単利とは、投資の元本にのみ金利や利息がつく運用方法です。
例えば、元本100万円を利回り5パーセントで単利運用した場合、毎年5万円ずつ増加していきます。
増えた5万円の部分には利息は追加されません。
一方、複利運用では元本だけではなく増えた金利や利息に対しても追加で金利がつく運用方法です。
単利の場合と同じように、100万円を利回り5パーセントで複利運用した場合、1年目は105万円になりますが、2年目には110万2,500円と少し増加していることがわかります。
最初は小さな違いに見えますが、複利運用の期間が長くなればなるほど増加率が大きくなります。
利回り別に複利運用をしたシミュレーションは記事後半に記載しているので、ぜひ確認してみてください。
長期的な運用が目的の場合、単利ではなく複利運用が可能な資産運用を選択しましょう。
基礎知識④:インカムゲインとキャピタルゲイン
続いて、資産運用における収入の違い「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の違いを解説します。
インカムゲインとは、配当金や金利のように毎月継続して得られる収入を指しています。
キャピタルゲインとは、主に売買取引をして一時的に得られる収入を指します。
インカムゲインは金額は少ないですが、継続して毎月入るという特徴があります。
一方、キャピタルゲインは、安定性や継続性はありませんが金額が大きくなりやすいことが特徴です。
継続した資産運用を目的とするなら、キャピタルゲインではなく不労所得になりやすいインカムゲインを意識した資産運用をおすすめします。
自分に合った資産運用を選ぶポイント
続いて、数々の資産運用から自分に合った運用方法を選ぶポイントを3つ紹介します。
資産運用選びのポイント
- 長期的に運用する
- 分散投資する
- リスク許容範囲を確認する
ポイント①:長期的に運用する
資産運用を考えたときに、考えるべきポイントは長期的な運用を前提にして投資先を選択することです。
「長期的」と言っても、投資家によって感覚が異なります。
この記事では、「最低でも1年後」までは運用できることを長期運用と表していきます。
短期的な利益を稼ぐトレーダーも多くいますが、ごく一部の限られた人だけが可能な方法です。
一般的な資産運用は、長期目線での運用が鉄則だと理解しておきましょう。
ポイント②:分散投資する
分散投資をすることも資産運用を選ぶポイントの一つです。
分散投資とは、一つの資産運用に集中投資せず、複数の投資先へ投資資金を分散させることです。
分散投資は、資産運用初心者にもできるリスク分散の基礎だと理解しておきましょう。
資産運用で分散投資する方法は次の3つに分けられます。
分散する項目
- 商品やジャンル
- 国や地域
- 買う時期
資産運用初心者は、この3つを意識して投資先を決めることを意識してみると良いでしょう。
ポイント③:リスク許容範囲を確認する
最後のポイントは、自分自身が許容できるリスクの範囲を理解することです。
投資できる金額や投資で増やしたい目標金額など、実は投資家によってさまざまな条件があります。
すべての資金を失ってでもハイリスク・ハイリターンな投資にチャレンジしたい投資家もいれば、できるだけ資金を失わずにコツコツ増やしたい投資家もいます。
これから資産運用を始める方は、元手資金がいくらあり、どこまで投資に利用できるのかを具体的に決めておきましょう。
利回りの低い資産運用
ここからは、具体的に利回りの低い資産運用を5つ紹介していきます。
利回りの低い資産運用
- 定期預金
- 個人向け国債
- 投資信託
- 株式投資
- ロボアドバイザー
定期預金
定期預金は、普通預金とは異なり定期的に一定金額を積み立てる預金です。
銀行の定期預金は利回りが低く、資産運用には向いていません。
簡単に引き出せないなどの不都合がありますが、普通預金より金利が高く設定されています。
しかし、2020年現在では定期預金の金利は0.02パーセント以下の低水準となっています。
日本のバブル期には5パーセントから10パーセントと高い金利だったことを考えると、今から資産運用を始める方の最適な運用先とは言えないでしょう。
それでも定期預金を行うメリットは、元本割れのリスクが少ないことです。分散投資のひとつとして選択肢に加えることをおすすめします。
個人向け国債
個人向け国債とは、国が個人に対して発行する債券です。
個人投資家が国に対してお金を貸して、元本に利子を加えて返してもらう資産運用です。
日本政府が発行する個人向け国債は、最低金利0.05パーセントまで保証されるという特徴があります。
また、個人向け国債は、国が破綻しない限り元本が保証されています。
銀行の定期預金よりも利回りが高いこともメリットです。
途中解約した場合にも元本は保証されていますが、利子として受け取った金額から手数料が発生するため注意が必要です。
日本だけでなく、海外の個人向け国債を視野に入れると資産運用の幅が広がるでしょう。
投資信託
投資信託とは、金融機関に投資資金を預けて代わりに運用してもらう投資商品です。
投資信託での目安となる利回りは1パーセントから3パーセントです。
投資の知識が少ない初心者でも、投資のプロが代わりに運用してくれるため難易度が低いという特徴があります。
一方で、プロに運用してもらうための手数料が高いことがデメリットです。
資産運用の勉強や取引をする時間のない方が、分散投資先の一つとして選択するにはおすすめの資産運用です。
株式投資
株式投資とは、企業が発行する株式を購入して利益の一部を配当金(インカムゲイン)として受け取れる資産運用です。
また、株価が上がったときに売却すると差額分の利益(キャピタルゲイン)を得られます。
一般的に、配当金の利回りは2パーセントから5パーセントで、購入する株式によって違いがあります。
価格変動が大きいため、配当金だけを目的にしていても価格下落によって結果的に損失になるリスクが高いです。
株式投資は経済の知識や投資の経験が豊富な方に向いているため、資産運用初心者には難しい投資方法でしょう。
ロボアドバイザー
ロボアドバイザーとは、利用者の資産と運用診断結果に合わせて運用方法を設定し、その後の資産運用をお任せできるサービスです。
登録時に投資判断とリスク診断を済ませるだけで、基本的にすべての運用をお任せできることが特徴です。
投資信託と似た仕組みですが、人の手ではなくシステムによって運用されているため、手数料が1パーセントほどと低く、運用コストを抑えられます。
ロボアドバイザーの目安となる運用利回りは2パーセントから5パーセントで、個人のリスク許容度によって異なります。
サービス事業者によっては1万円以下の少額で始められる場合もあるため、お試しで使用してみることをおすすめします。
ご自身の投資対象やリスク許容度などを総合的に判断して的確なアドバイスをくれるため、資産運用初心者でも学べることが多いでしょう。
利回りの高い資産運用
続いて、利回りの高い資産運用の種類を4つ紹介します。
利回りの高い資産運用
- REIT(リート)
- 不動産投資
- ソーシャルレンディング
- 不動産投資型クラウドファンディング
REIT(リート)
REIT(リート)とは、不動産を対象とした投資信託のことです。
運用会社に投資資金を預けることで、プロが代わりに不動産運用を行ってくれる仕組みです。
投資先は不動産に限定されていますが、居住物件や商業物件など幅広い種類があります。
また、国内だけではなく海外不動産を対象としてREITも選択できます。
REITの目安となる利回りは4パーセントから6パーセントです。
REITの分配金は不動産から得られる賃料から支払われるため、その他の投資よりも長期的に収益が継続しやすいことが特徴です。
ただし、投資信託とは違い最低投資金額が10万円以上となっている場合が多く、資金面のハードルが高く感じられるでしょう。
不動産投資
不動産投資とは、投資用にマンションやアパートを購入して貸し出したり、売買したりすることで利益を得る資産運用です。
目安の利回りは5パーセントから10パーセントと不動産の種類によって大きく異なります。
例えば、新築物件の場合は空室リスクや修繕リスクが少ない分、利回りが低くなっています。
一方で、中古物件の場合は修繕や空室リスクは高いですが、利回りを高く保ちやすいことが特徴です。
不動産投資は、数百万円単位の初期資金が必要であり、場合によっては借金をして不動産を購入しなければなりません。
不動産の知識があり、ハイレベルの資産運用を目指している方に最適な投資でしょう。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、「お金を借りたい企業(借り手)」と「お金を貸したい個人(投資家)」をインターネット上で結びつける資産運用です。
クラウドファンディングの一種であり、「貸付型クラウドファンディング」とも呼ばれています。
個人投資家は、企業に融資した金額に応じて利子として分配金を受け取れます。
目安の利回りは5パーセントから10パーセントと高いことがメリットです。
また、投資後に投資後には取引などの必要が無いためほったらかしで不労所得を得られます。
一方で、貸し倒れや返済遅延の可能性があるなどのデメリットは知っておかなくてはなりません。
ソーシャルレンディング事業者によっては、最低1万円から運用を開始できるため、複数の事業者に分散投資を行うことでリスクを下げられるでしょう。
まだ比較的新しい投資方法であるため、初めて聞いたという方もいるでしょう。
こちらで詳しく解説されているので、一度目を通しておいてください。
不動産投資型クラウドファンディング
不動産投資型クラウドファンディングとは、不動産会社が不動産の購入や運用を目的として、個人投資家から資金を集めるサービスです。
投資後は、運用する不動産の運用利益から個人投資家に分配金が支払われます。
平均の利回りは3パーセントから6パーセントほどですが、事業者によっては8パーセント以上の高利回りを目指すことができます。
また、不動産投資型クラウドファンディングは、最低1万円と少ない資金でも投資を始めることが可能です。
そのため、不動産投資を始めたいけれど、資金が足りない方や経験を積みたい方におすすめの資産運用だと言えます。
まずは少額を複数の会社に分散してリスクを抑えた運用をしてみると良いでしょう。
不動産投資型クラウドファンディングについても、初めて聞いたという方はこちらをチェックしておくことをおすすめします。
【利回り別】資産運用シミュレーション
続いて、利回り別に資産運用のシミュレーションをしていきます。
利回り1%、3%、5%、10%で100万円を30年運用した場合のシミュレーションです。
利回りの違いで資産の増え方にどのような違いがあるのかを理解しましょう。
利回り1%
100万円を30年間、利回り1パーセントで資産運用した場合、30年目で134.8万円まで増加します。
1年目から30年目までの金額推移は次のとおりです。
1パーセントでは資産の増加がわずかなであるため、リスクを抑えた保守的な運用先として利用していきましょう。
利回り3%
100万円を30年間、利回り3パーセントで資産運用した場合、30年目で242.7万円まで増加します。
1年目から30年目までの金額推移は次のとおりです。
1パーセントの運用から2パーセントの増加で、30年後には倍以上の増加を達成しました。
利回りにおける1パーセントの大切さを理解していただけたかと思います。
利回り5%
100万円を30年間、利回り5パーセントで資産運用した場合、30年目で432.2万円まで増加します。
1年目から30年目までの金額推移は次のとおりです。
資産運用において利回りの力を最大限活かせるのは5パーセントからだと言えるでしょう。
投資初心者は、まずは5パーセントの利回りを目標にするとリスクとリターンのバランスを保ちやすいです。
利回り10%
100万円を30年間、利回り10パーセントで資産運用した場合、30年目で1,744.9万円まで増加します。
1年目から30年目までの金額推移は次のとおりです。
10年目から20年目、20年目から30年目の増加額が特に大きくなっていることがわかります。
個人投資家が利回り10パーセントを目指せる資産運用はリスクも高くなるため注意が必要です。初心者が10パーセント以上を目指すことはおすすめしません。
個人投資家は利回り10%の目標が現実的
前項で、利回り別の資産運用シミュレーションを紹介しました。
利回り10パーセントでの資産増加は魅力的でしたが、ここが現実的な目標ラインとなるでしょう。
ここでは、個人投資家が現実的に目指せる利回りとリスクについて解説します。
1%〜5%までは努力なしで達成可能
1パーセントから5パーセントまでの利回りは、リスクが低いと言われる投資先を選ぶだけで達成可能です。
投資の勉強をする時間がない方や、リスクを取れない方は5パーセント以内を目指せる資産運用から選択しましょう。
今まで銀行預金で眠っていた現金を、利回り2パーセントから5パーセントで運用できる投資先で運用してみましょう。
絶対に失いたくない資金を、低リスクで運用しながら残った資金で5パーセントから10パーセントを目指せる運用に挑戦してみてください。
5%以上の達成には努力が必要
毎月継続したインカムゲインを得られる資産運用では、5パーセント以上を得ることは難しいため、売買をしてキャピタルゲインを目指す必要があるでしょう。
そのためには、勉強などの最低限の努力が必要となります。
そして、不動産投資や株式投資の売買などを行ってみてみると良いでしょう。
一方で、高利回りとして紹介した「ソーシャルレンディング」や「不動産投資型クラウドファンディング」といった比較的新しい投資は、売買取引をせずに5パーセント以上の利回りを目指すことが可能です。
少額で始めることもできるため、一度試してみても良いでしょう。
まとめ
資産運用を行う上で欠かせない利回りの仕組みと基礎知識を解説し、目安となる利回り別の資産運用とシミュレーションを紹介しました。
ご自身の資金とリスクに合わせて、気になった投資に挑戦してみてください。
決して一つの資産運用に全額投資をせず、複数の資産運用に分散投資することを忘れないようにしてください。