ソーシャルレンディング投資を検討されている方、また投資の資金を増やすかどうか迷っている方など、ソーシャルレンディングに魅力を感じる一方でリスクや先行きに不安を感じている方もいるかも知れません。
そんなときに参考になるのが、ソーシャルレンディング投資を何年も続けている先輩投資家の経験談でしょう。
そこで、今回クラウドアンサー編集部ではソーシャルレンディングに関する著書もある投資家SALLOW氏にインタビューを実施しました。
なんと、9,000万円以上の資金を運用中だというSALLOW氏。
なぜソーシャルレンディングに魅力を感じているのか、またこれまでの経験や今後のソーシャルレンディング業界への展望も語っていただきました。
目次
ソーシャルレンディング投資家SALLOW氏について
SALLOW氏はソーシャルレンディング投資を中心としたブログ「ソーシャルレンディング投資記録」を運営されています。
また、2018年にはかんき出版からソーシャルレンディング投資初心者に向けた著書「1万円から始める投資 ソーシャルレンディング入門」も執筆するなど、国内でも随一のソーシャルレンディング投資家として注目を集める存在です。
ソーシャルレンディングを始めたきっかけと現在の投資状況
投資資金のうちの大半をソーシャルレンディングに投資しているというSALLOW氏。
なぜソーシャルレンディングという投資手法に魅力を感じているのか、ソーシャルレンディングを知るきっかけは一体何だったのでしょうか。まず気になるその点を聞いてみました。
ソーシャルレンディングを知ったきっかけ、投資を始めたきっかけを教えてください
ソーシャルレンディングのことを知ったのは2012年。
当時、株投資などを行っていてSBI証券の口座を持っていたことから、SBIソーシャルレンディングを紹介されました。
そのときはまだ投資金額が多くなく、少しやってみるとかいう程度でした。
その後、幸い株式投資でまとまった利益を出すことができたのですが、株で利益を出すには相場の動きを常に見ていなければいけませんし、値動きに一喜一憂するのって疲れますよね。
そのため「もう疲れる株はやめよう」と思い他の投資手法を探しました。
そこでソーシャルレンディングのことを思い出し、まとまったお金を投資し始めたのです。
2019年12月現在ソーシャルレンディングにはどれほど投資していますか?
ソーシャルレンディングだけなら7,500万円ほど。
似た性質を持つ投資である不動産投資型クラウドファンディングに1,500万円ほどですね。
年間の利回りや収入はどれくらいですか?
最近はソーシャルレンディングも徐々に利回りが下がりつつあるので、大体税引き前で5パーセント弱くらいです。
常に全資金を運用できているわけでもありませんし、配当金の金額にすれば年間400万円ぐらいですね。
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングを利用されているのは、やはり値動きがないことが理由ですか?
そうですね。
株やFXと比べると派手さはないですが、自分の性格に合っていると思います。
おかげでマイペースに資産を増やすことができています。
他にはなにか注目している投資はありますか?
ロボアドバイザーには300万円ほど資金を入れています。
ロボアドバイザーも運用が自動的なので任せらますし、値動きが少ないからですね。
SALLOW氏が選ぶソーシャルレンディング会社はどこなのか
ソーシャルレンディングにだけでも7,500万円もの資金を投入しているSALLOW氏。
ソーシャルレンディングに本格的に投資するようになったのは2016年からとのことですが、その中で最も資金を入れている、つまり信用しているソーシャルレンディング会社はどこなのでしょうか?
最も資金を入れているソーシャルレンディング会社はどこですか?
SBI証券をきっかけにソーシャルレンディングのことを知ったので、「SBIソーシャルレンディング」ですね。
1,800万円入れています。
その次は「クラウドバンク」と「オーナーズブック」で各1,100万円ほど。
その次が「Funds」で600万円です。
なぜそれらの会社を選んだのでしょうか?
看板、つまり信用を大事にする会社であれば、問題を起こしにくいと思っているからです。
SBIソーシャルレンディングはSBIグループの一員ですから、不祥事があればSBIグループやホールディングス本社に影響があります。
ですから、問題を起こさないように気をつけていると感じています。
SBIソーシャルレンディングにはブロガーの立場として、間接的ながらも会社としての信用を守ることに注意を払っている姿勢を感じています。
だからこそ私も信用しています。
Fundsは2019年1月に運営を始めたばかりの会社ですが、そこまで投資できる理由はありますか?
Fundsを運営する株式会社クラウドポートは、もとはソーシャルレンディングのメディアをやっていましたよね。
それだけにソーシャルレンディング業界のことをよく観察しており、なぜこれほど行政処分を受けるか、被害者が相次いだのか知っているでしょう。
「ソーシャルレンディングで投資家に損をさせない」「投資家が安心して投資できるようにする」その処方箋がFundsだと思っています。
Fundsの投資スキームはかつて起きた問題点を調査し、ソーシャルレンディングの仕組みに関わる問題の解決に成功していると思うため、資金を入れています。
他のソーシャルレンディング会社も含めて10社以上投資されているようですが、会社の分散だけではなく投資先の事業や国も分散していますか?
もちろん、それらの分散にも気を使っています。
不動産関係の案件が中心ですが、案件のカテゴリで言うと、
- 国内の不動産案件:半分
- 国内の事業性資金案件:2割弱
- エネルギー関係の案件:1割強
- 海外案件:2割ほど
といった感じです。
案件数は240件ほどです。
近頃はソーシャルレンディング会社でも海外の案件増え使う会社が増えています。SALLOW氏はどの会社の海外案件に投資していますか?
目立ったところでは、「クラウドクレジット」が460万円ほど、「クラウドバンク」のアメリカの不動産案件が250万円ほどです。
さまざまなソーシャルレンディング案件に注目していると思いますが、最近気になっている案件はありますか?
一つは「ポケットファンディングの軍用地担保案件」ですね。
軍用地は国がお金を支払って借りている土地です。
これ以上ない最高の貸付先ですよね。
国がお金を支払ってくれる土地が担保なので、投資の安全性は高いと思っています。
一方、軍用地は直接自分で投資した場合、相場の利回りは2パーセントくらいのものが多いです。
それほどおいしい投資先ではありません。
しかし、ポケットファンディングの軍用地案件の利回りは4パーセントから5パーセントです。
つまり、自分で直接軍用地案件に投資するよりも高い利回りです。
ソーシャルレンディングを通すことで、高い利回りを獲得できるという旨味があります。
もちろん、軍用地も国が借りなくなるリスクはあるのですが、それまでには1年から2年前には事前予告がると聞いています。地権者や利害関係者との調整も長引くでしょう。
ポケットファンディングの軍用地案件は1年ほどの運用期間ですから、運用中に国から返還されるリスクは非常に小さいと思っています。
もう一つ取り組みたいのは、「ネクストシフトファンド」や「クラウドクレジット」が提供する社会的インパクト投資ですね。
これらの投資先は、一つは海外案件への分散ができるという意味合いもあります。
もう一つは、投資で得た利益で「何かしら人の役に立ちたい」「社会貢献をしたい」という考えがでてきたこともあります。やらぬ善よりやる偽善、動機がなんであれ資金の一部が社会問題の解決につながるというのは、悪い気はしません。
そのため、カンボジアの産業や農業の発展に貢献できるマイクロファイナンス機関を通した投資には興味があります。
カンボジアではマイクロファイナンス機関が機能しています。
もちろんリスクもありますが、融資先の分散ということでリスクも軽減できます。
多少の利益が得られますし、投資を通じて人の役に立つ実感も得られる。
そのため、今後はこちらにもお金を入れていきたいですね。
ソーシャルレンディング投資で損失を被った経験
ソーシャルレンディング投資経験が豊富なSALLOW氏。
ソーシャルレンディング投資で少なからず損失を被ったことがあるのか、その経験についても聞いてみました。
ソーシャルレンディング投資で損失を被ったことはありますか?
2019年12月末現在、「maneo」にはかなりの金額の資金を拘束されている状態です。
あと、「トラストレンディング」にも投資をしていましたね。
クラウドクレジットでも、一部の案件で返済遅延が起こっているものがあります。
すでに損失が決定したもの、及び遅延が起きているものの総額は、全体で1,000万円ほどです。
もっともこれまでの累計利益も1,000万円以上ありますので、万が一全ての遅延案件が全損しても投資の損はありません。
そういった経験を踏まえて現在投資をするときにどういった点に注意をされていますか?
まず、融資先の企業名を明らかにしていない案件には基本的に投資していません。
金融庁から匿名化解除の方針が打ち出された後なのに、融資先の企業名を出さないということは、それなりの理由があるはずです。
安全性を考えるのであれば、そういった潜在的な問題がありそうな会社には投資しない方が良いかもしれません。
ただし、まったく匿名の案件に投資してないわけでもないです。
匿名化しなくてはいけない理由をきちんと公開されていて、自分自身で納得すれば投資するケースもあります。
匿名化の解除はソーシャルレンディング投資において大きな意味を持つと感じますか?
そうですね。
法律では禁止されていることですが、融資先の名前が明らかになると投資家が直接返済を迫る可能性もあります。
今は担保の情報も明らかになっている案件が多いですし、かつては悪くいえばごまかしが効いていた部分が、匿名化によってごまかしが効かなくなったことで、ソーシャルレンディング会社側もブレーキがかかるようになったと思っています。
投資家側は、リスクを考えずひたすら利回りの高い会社にばかり投資するなど、ブレーキも効かなくなっていたわけです。
しかし、今は情報がわかるようなったことで、ブレーキが効き安全性に気を配る人が増えました。
それと同時に投資家には自己責任が求められるようになっています。
投資手法として、健全化の傾向が見えているのは大変良いことだと思います。
リスクの面で言えば外国の案件、特に外貨建て案件などは国内案件にはリスクが存在していると思います。そういった案件に投資するときの注意点があればお聞かせください
まず、外国通貨建て案件は投資初心者の方はやるべきではないと思います。
やるとしたら、新興国通貨など値動きの激しいものではなく、先進国通貨や、先進国通貨に連動した動きをするものに限定しています。
そして、その通貨相場が過去にどれほどのレンジで動いてきたかもしっかりとチェックしています。
それでもソーシャルレンディングの投資を始めた目的は、安定した収益を求めたいからです。
大きな為替リスクを取るのは安定した収益という目標とは相反すると考えていますので、基本的には、私は外貨建て案件にはあまり投資していません。
金融庁の匿名化解除など2019年のソーシャルレンディング業界で特に注目したニュースは何でしょうか?
まずは、当然匿名化解除方針の打ち出しです。
そのインパクトの理由は先に挙げたとおりです。
これも先ほど名前を出しましたが、もう一つはFundsの登場ですね。
Fundsはソーシャルレンディング投資のスキームの問題を解決しただけではなく、融資を受ける会社のプロモーションにも使われている点がおもしろいです。
具体的にどのような点でしょうか?
例えば、大阪王将がFundsで5,000万円の募集を行いました。
5,000万円という金額は、大阪王将の規模であれば融資の必要性が薄い規模の金額だと思います。
しかし、この案件には食事の割引制度がついてきたり、新メニューの体験イベントに招待するといった特典が用意されていました。
大阪王将にとっては資金を調達できるだけではなく、ソーシャルレンディングを通じて大阪王将のファンをつくる意味もあるわけです。
この事例のように、企業にとってのPR活動に、ソーシャルレンディングが利用されることも増えていくのではないでしょうか。
今後のソーシャルレンディング業界をどう捉えているのか
金融庁の融資先匿名化解除が、ソーシャルレンディング業界に大きな影響を与えたと語るSALLOW氏。
そこで、2020年のソーシャルレンディング業界の展望についても聞いてみました。
2020年のソーシャルレンディング業界はどのように変わっていくと思っていますか?
行政処分を受ける会社が相次いだことによって、2019年前半は一時的にソーシャルレンディング業界の伸び悩みを感じました。
しかし、その結果金融庁の匿名化解除を行い、また新規投資が増えていると思っています。
そして、同時に過去の負の遺産の整理が進んでいますね。
また、Fundsのように新しい投資スキームを開拓する会社が生まれました。
上場企業への融資ができる事例が増えれば、融資先の信用性が高いため初心者の方も取り組みやすくなります。
今、国が2,000万円の貯蓄を国民に求めたり、「iDeCo」や「つみたてNISA」といった手段を用意したりして、国民が積極的に資産形成を取り組むように誘導していますよね。
でも、日本人は投資に慣れていない人が多いです。
そこで、投資初心者でも始めやすいソーシャルレンディングが注目されるようになれば、参入する人は2018年以前の勢い、もしくはそれ以上になると考えています。
利回りは徐々に落ち着くと思いますが、そのぶん健全で安全な投資対象になります。
一攫千金はないものの、長期スパンに立って投資できる上に、手間のかからない運用ができる投資手法として注目されていくのではないでしょうか。
そうなるための課題はありますか?
最近は、どこのソーシャルレンディング会社も募集が始まると、一瞬で投資上限に達してしまうほどです。
現在の規模でも投資家の需要に、案件の供給が追いついていないです。
各ソーシャルレンディング会社には、もっと質量ともに優良な案件の掘り出しを行って欲しいと思っています。
投資というのは、何かとフェイクニュースが飛び交う世界です。
情報の投資家に対しての情報の提供量の質量をもっと増やして欲しいですね。
投資に対し単純な利回りの追求よりも、匿名なら匿名である事情の説明というものをきちんとして欲しいと思っています。
その上で、投資家が納得して投資できるのであれば、株やFXのような競い合いを避けたい投資家の方の受け皿として、ソーシャルレンディングの市場が広がっていくのではないでしょうか。
これから投資を始めたい人、ソーシャルレンディング投資をもっと大きくしたい人に対してメッセージをお願いします!
日本ではまだまだソーシャルレンディングの市場が小さいです。
今の段階で投資している人達は、1962年に提唱されたイノベーター理論によれば、まだイノベーターの段階でしょう。
匿名化の解除で安全性が高くなり、市場が広がればイノベーターからアーリーアダプターが参入する市場へ移行できると私は感じています。
待っていれば資産が増える、これは本当に気が楽なものです。
利益の奪い合いをすることが嫌いな投資家の方は、是非ともソーシャルレンディングを始めてみてください。
まとめ
ソーシャルレンディングの投資歴が長く、大きな金額を投資しているといったように、経験が大変豊富なSALLOW氏にインタビューを実施させて頂きました。
SALLOW氏はソーシャルレンディングに対しては今も大きな魅力を感じており、投資を継続しています。
2019年は融資先の匿名化解除、そして新たな投資スキームを持つFundsの登場と、ソーシャルレンディングにとってエポックメイキングな出来事が2つも起きた1年だったとも語ります。
2020年はソーシャルレンディングにとって、飛躍の一年になる可能性も高いのではないでしょうか?
投資初心者の方は、SALLOW氏がどんな会社、どんな案件を選んで投資するのかも気になるところかもしれません。
SALLOW氏は、自身のブログ「ソーシャルレンディング投資記録」においてソーシャルレンディングの投資記録を公開しています。
気になった方はぜひブログおよびTwitterもチェックしてみてくださいね。