2018年は、まさにソーシャルレンディング業界にとって激動の年になりました。
- 行政処分を受ける会社
- 第二種金融商品取引業免許を抹消される会社
が相次ぎ、残念ながら損失を発生させた投資家も数多くいます。
金融庁もこの事態を重く見たのか、2019年3月についに「融資先匿名化」の解除方針を打ち出しました。
この方向転換を受け、ソーシャルレンディング会社各社の中でも、融資先の情報公開に踏み切る会社が増えています。
では、具体的にどのような情報開示を行っているのか、各社のホームページなどで確認してみました。
①クラウドバンク
ソーシャルレンディング業界累計募集金額「第3位」に位置しているクラウドバンクでは、一部の案件において大幅な情報公開を行っています。
詳細な情報を確認できるのは、あくまでクラウドバンクに会員登録をしている人のみです。
ただ、元々投資先の情報を知りたがるのは、クラウドバンクに会員登録をしているはずなので、大きな問題ではないと言えるでしょう。
その中で、公開される情報は次のようになっています。
- 社名
- 住所
- 業務内容
- クラウドバンクとの関係
- 会社略歴
- 財務情報
- 売上高
- 営業利益
- 純資産
- グループ会社の財務状況等
- 担保・保証の概要
この中で、特に重要なのは、
- クラウドバンクと融資先の関係
- その会社の財務状況
でしょう。
ソーシャルレンディング会社の中で、不祥事を起こした会社の中には、自社の親会社や関連会社にのみ融資を行っていたというものがありました。
つまり、ソーシャルレンディング会社が企業グループ内の資金調達部門にすぎない存在であり、融資先に対し資金回収が強く行えない立場だったのです。
しかし、クラウドバンクと財務関係のない会社であれば、融資先からの貸しはがしにより、融資先が仮に倒産しても特に問題は起こりません。
また、財務状況も確認できるため、融資先の経営の安定性を把握することができます。
現在は、太陽光案件を中心として募集しているクラウドバンクだけに、不動産案件はありません。
ただ、不動産案件が公開されたときには、設定されている担保情報や、取得・運営を行う不動産の情報も公開されることが望まれます。
②SAMURAI
比較的新しいソーシャルレンディング会社であるSAMURAI(サムライ)。
SAMURAIでは、2019年3月末に特定案件において融資先の情報を公開する方針の発表を行っています。
実名化案件と謳っているだけあって、「アンフィニプロジェクト社」という融資先の企業名が、案件の詳細情報の中に記載されています。
融資先が案件名に記載されているので、実際にどの会社に融資行うのかが非常に分かりやすくなっています。
財務状況などは公開されていませんが、融資先の名前がわかれば、自分でその会社の情報を収集することができるので投資判断は行いやすくなるでしょう。
SAMURAIが募集している案件は、残念ながらまだ安定性の高いものは少なく、この案件も担保が設定されていないというリスクの高さがあります。
投資においては、融資先の名前が出ているから信用できると考えるのではなく、慎重に検討しましょう。
SAMURAIの情報開示方針の中で、注目するべきポイントは次の内容です。
1.遵法性審査
貸付先や貸付先の経営陣の属性等が問題ないか調査を行います。
2.与信審査
(1)定量評価
貸付先の財務諸表(基本過去3期分)を入手し、SAFにて各指標から導き出されるスコアリングを算出し、貸付先の基準となる与信額を算出します。(あくまで基準となる指標であり、他の要素もある為、必ずしもスコアリングによる与信額=融資額になるわけではありません。(2)定性評価
貸付先の代表者との面談を行い、企業状況(外部・内部環境、経営力等、数値で表現することができない部分)のヒヤリングを実施し、経営実態の調査を行います。3.担保評価
担保付きローンの場合は、SAFで担保額の評価を行います。
例えば不動産の場合は、収益還元による評価、近隣相場及び売買事例などからの評価、積算法による評価等を行い、一番適切であると考える評価方法を採用し、(もしくは複数の評価方法による折衷案)、評価額を算出します。実際の融資可能額は、SAFの算定した担保額に掛目※1をかけ算出する形になります。*第三者の不動産鑑定、意見書を取得する場合もございます。
4.融資可能額の算出
1.遵法性審査
2.与信審査
3.担保評価上記1~3を実施し、総合的な観点から融資可能額を算出します。(出来る限り客観性に基づいた算出を行っております。)
引用元:SAMURAI(サムライ)
ここではSAMURAIが融資先を選定する際に、どのような点をチェックして案件を組成しているのかが詳細に書かれています。
こういったさまざまな調査を行っている点は、信頼に値すると言えるでしょう。
③Funds
引用:Funds(ファンズ)
新興のソーシャルレンディング会社であるFunds。
運営元のクラウドポートがソーシャルレンディングメディアを運営していただけに、ソーシャルレンディングに関するノウハウは優れたものがあります。
また、Fundsではプレスリリースで情報公開方針を一早く発表しています。
実際の案件を見てみても、Fundsでは融資先の名前、そして不動産案件の場合は募集を行う不動産とその所在地がしっかりと記載されています。
区分マンション案件では、東京・渋谷区にある区分マンションを募集対象にするなど、資産価値が一定のものがあると把握しやすく、しっかりと投資家でも投資判断できるような情報提供を行っています。
情報開示方針をいち早く打ち出したこともあり、Fundsはソーシャルレンディングをより健全な投資対象としていきたいという考えが見て取れるものになっています。
④LENDEX(レンデックス)
LENDEX(レンデックス)では以下のような情報開示更新の発表を行っています。
2019年5月時点では、貸付先のひとつである東京不動産という中国系の不動産会社の案件において、融資先の名前を公開するとしています。
残念ながら、全案件において融資先の名前が公開されるわけではありませんが、融資先の協力が得られ次第、徐々に公開していくとしています。
今後の対応に期待が持てるでしょう!
その他のソーシャルレンディング会社の対応
その他のソーシャルレンディング会社は、今後どのように対応していく予定なのでしょうか?
①SBIソーシャルレンディング
情報開示方針を見ると、SBIソーシャルレンディングは特に情報開示行っていません。
資金回収の手腕には定評がありますが、情報開示においてはまだまだ遅れをとっているようです。
②クラウドクレジット
クラウドクレジットは、海外の融資案件ということもあり、情報が詳細に開示されたとしても調べにくいです。
ただ、クラウドクレジット社の杉山社長は、全案件においていずれ情報開示を行いたいという内容を示しています。
③maneo(マネオ)
出典:maneo(マネオ)
数々の不祥事を発生させているmaneoマーケットですが、残念ながらこちらは一切情報開示を行っていません。
行政処分を受けた後、投資家に対して投資家保護が行えるような情報公開をしていきたいという方針を発表しているものの、具体的な行動に移してはいないのです。
まとめ
これから先、ソーシャルレンディング会社の中で「勝ち組」「負け組」が出てくるとしたら、「情報開示を行っている会社」と「情報開示を行わない会社」が決め手になってくるかもしれません。
情報開示を行っている会社を中心に、投資を検討してみてはいかがでしょうか。