目次
クラウドファンディングの融資型とは
さまざまな種類があるクラウドファンディングですが、もっとも人気があるのは融資型と呼ばれる投資手法です。
ただ、この融資型は「貸付型クラウドファンディング」「ソーシャルレンディング」などさまざまな呼び名があり、サイトも複数乱立しています。
正直、何が融資型なのかよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
今回は、クラウドファンディングの融資型とは何か、仕組みや他のクラウドファンディングとの違い、代表的なサイトについて紹介していきます。
融資型の仕組み
クラウドファンディングの融資型(以下、融資型クラウドファンディング)は、インターネット上で資金を借りたい人と貸したい人を結び付けるマッチングサイトのような仕組みで成り立っています。
融資型の特徴は、単なる資金の貸し借りではなく、利息が発生するという点にあります。
不特定多数の投資家が余裕資金を貸し出すことで、資金の借り手から利息という利益を受け取れるようにした新しい投資の形が、融資型なのです。
通常、銀行以外で資金の貸し借りによって利益を得る行為(融資)をするには、貸金業(いわゆるノンバンク)の登録が必要です。
そのため、一般の個人投資家が公に融資をして利益を得るということはできませんでした。
しかし、融資型クラウドファンディングでは、貸金業の登録をした事業者が資金の貸し手と借り手の間に入ることで、個人投資家でも間接的な融資ができるようになったのです。
資金の借り手
融資型クラウドファンディングにおける資金の借り手は、国内外の中小企業がメインです。
運営サイトによっては資金需要が旺盛な海外の企業を借り手としている場合もあり、その対象は国内にとどまりません。
資金の借り手は、融資型のサイトを運営する運営事業者に資金を借り、返済期日がきたら借りた資金(元本)にプラス利息を上乗せして支払います。
この利息が、融資型を運営する事業者の営業収益であり、資金を貸し出す投資家の利益にもなっているのです。
運営事業者(サイト運営者)
融資型クラウドファンディングの運営事業者は、インターネット上で特定のプラットフォームを持ち、資金の貸し手と借り手をつなげる役割を果たしています。
インターネットという世界で、不特定多数の投資家(資金の貸し手)から資金を集め、それを原資に資金の借り手企業に融資を行うという行為は、誰でも簡単にできるわけではありません。
資金を集める行為には金融商品取引業者の登録が、資金を貸し付ける行為には貸金業の登録が必要です。
融資型クラウドファンディングの運営事業者は両方の登録をしたうえで、投資家(資金の貸し手)から資金を集めて事業を運営しています。
資金の貸し手(投資家)
融資型クラウドファンディングにおける資金の貸し手は、不特定多数の個人投資家です。
投資家は運営事業者が運営するサイト上で、融資のために組成されたファンドに投資し、資金を貸し付けします。
投資家が投資するのはあくまで運営事業者が組成するファンドに対してであり、資金の借り手企業に直接融資をするわけではありません。
投資家が資金の貸し付けの対価に得られる利益は、ファンド募集時に記載されている予定利回りを元に計算された利息です。
予定利回りは運営事業者やファンドによっても異なりますが、年3パーセントほどから年10パーセントを超えるものまであり、簡単に高利回りのリターンを得られる仕組みになっています。
他のクラウドファンディングとの違い
融資型クラウドファンディングが他のクラウドファンディングと違う点は、主に次の4点です。
- 投資に対するリターンは、資金に対する利息(金銭)
- 各ファンドには予定利回りが記載されており、リターンがある程度予測できる
- 市場規模がもっとも大きいため、運営サイトが多い
- 業界の成長が目覚ましい一方で投資元本の棄損や遅延トラブルなどもあり、ネガティブな話題も目立つ
他のクラウドファンディングでも投資をできるものはありますが、その場合はリターンが金銭以外のモノやサービスであったり、非上場企業の株式であったりします。
「利息」という形でリターンを受けられるのは融資型ならではで、予定利回りを元にわかりやすい投資ができるのが大きな特徴なのです。
また、融資型はクラウドファンディング業界でもっとも市場規模が大きく、運営サイトが複数乱立している状態です。
サイトの選択肢が多いことは分散投資を行ううえでも喜ばしいことですが、一方で詐欺的な募集を行うサイトも増え、多くの投資家が被害を受けたラッキーバンクやみんなのクレジットという悪質事業者も出てしまいました。
業界が大きく成長していく裏で、こうした運営事業者やサイトのトラブルも多く、特に2018年はネガティブな話題が多い年になってしまいました。
融資型クラウドファンディングは元本保証がない投資であり、業界はまだまだ発展途上にあります。
興味がある人は、こうしたリスクを理解したうえで自己責任のもと、投資をしてください。
代表的な融資型サイト一覧
融資型クラウドファンディングのサービスを提供する、代表的なサイトをご紹介します。サイトごとの特徴も記載しておりますので、サイト選びの参考にしてください。
①maneo(マネオ)
出典:maneo(マネオ)
maneo(マネオ)は2007年に創業し、以後10年以上融資型クラウドファンディング業界の先陣に立ってきたリーディングカンパニーです。
2019年現在で成立ローンの総額は1,600億円を超えており、その実績は他サイトと比べても頭一つ飛びぬけています。
実績があり取扱い案件も豊富なため、信頼できるサイトとして安定した地位を保っていましたが、2019年現在は厳しい状況に立たされています。
発端は2018年、maneoがファンド募集を代行していたグリーンインフラレンディング社のサイトで虚偽の説明があり、maneoが監督責任を問われる形で行政処分を受けたことです。
そこからグリーンインフラレンディング社を始めとして、複数のmaneo提携サイトで資金のトラブルが発生し、2018年はmaneoにとってネガティブな話題が続く年になってしまいました。
2019年3月には創業者が代表取締役から退き、現在は新社長の元、経営の立て直しをはかっています。
業界最大手でありながら今は厳しい冬の時代を迎えているmaneoですが、これからどのような新体制を見せるのか、今後の動向に目が離せません。
②SBIソーシャルレンディング
SBIソーシャルレンディングは2011年創業、maneoに次ぐ業界2位のローン成立実績を誇る大手サイトです。
SBIソーシャルレンディングの特徴は、なんといっても大手金融グループの「SBIグループ」が運営しているという絶大な信用力です。
メディアに取り上げられたり、業界初のCMを放映したり、定期的なキャンペーンをしていたりするため一般的な知名度も高いのではないでしょうか。
SBIソーシャルレンディングでは、不動産案件から事業性資金、再生可能エネルギー案件などさまざまな案件を取り扱っています。
数億円規模の案件ですら一瞬で資金が集まるため、人気案件への投資はハードルが高くなっていますが、投資しやすい常時募集案件も用意されています。
③クラウドバンク(Crowd Bank)
クラウドバンク(Crowd Bank)は、日本クラウド証券が運営する融資型クラウドファンディングサイトです。
他の事業者が持つ第二種金融商品取引業者よりさらにハードルの高い「第一種金融商品取引業者」の免許を保持していることが大きな特徴で、ローン成立実績はmaneo、SBIソーシャルレンディングに次ぐ業界3位です。
使いやすいサイトデザイン、案件の豊富さが人気のクラウドバンクですが、実は過去2回、顧客管理の杜撰さなどを理由に行政処分を受けた過去があります。
これは融資型クラウドファンディング業界でも異例の回数であり、重い処分です。
しかし、そんな不名誉な過去があるにもかかわらず安定した人気を保っている理由は、投資家に遅延や元本割れなどの実害を発生させていないという実績があるからと言えるでしょう。
二度の行政処分を受けながらも、経営陣を刷新して見事に復活したクラウドバンクは、今後も目が離せないサイトです。
④LCレンディング
出典:LCレンディング
LCレンディングは、ジャスダック上場企業であるLCホールディングス株式会社の傘下にあるサイトです。
LCレンディングは金融商品取引業者の登録をしておらず、同サイトのファンド募集は金融商品取引業者であるmaneoが代行しています。
いわゆる「maneoファミリー」です。
maneoファミリーは2018年のmaneoの行政処分以降、さまざまなサイトでトラブルが続出していますが、LCレンディングでは目立ったトラブルはなく、順調に実績を積み重ねています。
LCレンディングの特徴は、グループ会社のつながりを生かした不動産案件が多いこと、上場企業である親会社の保証付き案件も用意されていることです。
特に親会社の保証付き案件は保全性が高く、短期間の案件が多いため人気があります。
⑤クラウドクレジット
クラウドクレジットは、海外案件を中心に取り扱う融資型クラウドファンディングサイトです。
2014年サービス開始というまだ若い企業でありながら、伊藤忠商事や第一生命保険会社など、名だたる企業から出資を受けており、社長が積極的にメディアに出るなど非常に注目度が高いサイトです。
クラウドクレジットは、海外の新興国など資金需要が旺盛な国へ資金を提供しているため、高利回りの案件が多いことが特徴です。
ただ、高利回り案件ゆえに元本割れリスクも高く、今までに10パーセントほどの案件で元本割れを起こしています。
クラウドクレジットではこうしたリスクの高さを常に顧客に発信しており、全案件へ投資してリスク分散することを推奨しています。
⑥オーナーズブック(OwnersBook)
オーナーズブック(OwnersBook)は、不動産のプロが運営する不動産特化型の融資型クラウドファンディングサイトです。
不動産投資案件を取り扱うサイトは複数ありますが、その中でもオーナーズブックは特に人気が高く、案件の募集開始時にはアクセスが集中しサーバがダウンしたという逸話があるほどです。
オーナーズブックの人気の秘密は、
- 運営会社が東証マザーズ上場企業のロードスターキャピタル株式会社ということ
- 取り扱う全案件に不動産担保が設定されていること
- 貸し倒れや遅延実績がないという信頼性の高さ
にあります。
ただ、
- 募集案件がそれほど多くないこと
- 最近はアクセスの集中を避けて案件の募集開始時刻が非公開になっていること
から、投資するのが大変なサイトでもあります。
オーナーズブックに投資する際は、ある程度時間の余裕を持つようにしてください。
Funds(ファンズ)
引用:Funds(ファンズ)
ファンズとは、融資型クラウドファンディングの情報メディア、「クラウドポート(現「ZUU funding」)を運営していた株式会社クラウドポートのサイトです。
他の融資型クラウドファンディングサイトと異なり、「貸付ファンドのオンラインマーケット」という位置づけでさまざまな貸し手企業を集めた楽天市場のような仕組みを取っています。
ファンズの魅力は、複数の企業を選べるおもしろいサイトコンセプトや、アイフル株式会社などの上場企業もサイトに名を連ねているという信用力にあります。
サービス開始後まだ1年にも満たない新規企業ながら、すでに大きな話題を集めており、投資するのが難しいという問題があります。
最近では、一部のファンドで投資申込抽選機能を導入し、より幅広い投資家にチャンスがいきわたる仕組みを取り入れ始めました。
元々情報メディアの運営をしていたこともあり、見やすいサイトデザイン、投資家視点の使い勝手を追求したサイト作りには定評があります。
まとめ
融資型クラウドファンディングについてご説明してきました。大切なポイントは、次の4点です。
- 融資型クラウドファンディングは、投資家がインターネット上で資金を貸し付けし、利息を得る投資法。
- 投資のリターンがわかりやすく簡単に利益を得られる手法だが、元本保証はない。
- クラウドファンディングの中では融資型の規模が一番大きいが、融資型ではトラブルも多く、サイト選びが重要。
- 代表的なサイトはmaneo、SBIソーシャルレンディング、クラウドバンク、クラウドクレジット、オーナーズブック、ファンズなど。maneoは最大手だが2018年のトラブルにより現在厳しい状況にある。
融資型クラウドファンディングは資金を貸し付けるだけで簡単にリターンを得られるシンプルな投資法です。
クラウドファンディングの中では目覚ましい成長を見せていますが、その一方でトラブルも多発しており、まだまだ業界自体が発展途上にあります。
融資型クラウドファンディングを始めるときはこうした業界の動向やリスクを理解したうえで、自己責任の元投資をするようにしてください。