利回りが高くて人気があるソーシャルレンディングですが、その中でも不動産に特化したサービスがあります。
よく似たものに「不動産投資型クラウドファンディング」もありますし、どんな違いがあるか分からず困ってしまう方も多いのではないでしょうか?
この記事では、不動産事業に投資するソーシャルレンディングの仕組みや、その他の似ている投資方法の違いを解説していきます。
ソーシャルレンディングのメリット・デメリット、おすすめの会社も解説するので、投資を考えている方はヒントにしてみてください。
目次
筆者プロフィール
ファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つ、金融機関出身のフリーライターです。
投資歴は4年、運用資産は1,000万円に突入し、毎月約2万円以上の不労所得が入ってくるようになりました。
読者の方々の老後の豊かな暮らしや早期リタイアをサポートするため、金融や投資の記事を多く執筆しています。
ソーシャルレンディングは1万円から投資できるサービスが多く、投資をしたことがない初心者の方も始めやすいです。
今回は不動産に特化したソーシャルレンディングについて、どんなメリット・デメリットがあるのかを解説していきます。
不動産のソーシャルレンディングの仕組み
不動産型のソーシャルレンディングは、数万円という少額でも不動産に間接的に投資ができるサービスです。
どうして小口で投資ができるのか、仕組みを学んでいきましょう。
一般のソーシャルレンディングとの違い
ソーシャルレンディングにはさまざまなタイプがあり、一般的には企業が自分の事業に使う資金を調達するために使います。
事業の内容は、飲食店の経営や貸金業、海外の中小企業への融資などさまざまです。
その中で、不動産投資に特化したソーシャルレンディングのことを「不動産型ソーシャルレンディング」(または不動産投資型ソーシャルレンディングなど)と呼びます。
そもそも、ソーシャルレンディングは資金調達したい企業がオンライン上で投資の応募を募り、個人などの投資家が投資したい案件を見つけて出資するという仕組みです。
資金調達ができて案件がスタートしたら、企業はあらかじめ決められた期限までに投資家に分配金を支払い、満了したら調達した資金の元本も返済します。
よって、投資家は分配金の分だけ儲けを得られます。
不動産に特化したソーシャルレンディングも、仕組みは同様です。
不動産関連の事業を行う会社が資金調達のためにソーシャルレンディングを使い、個人の投資家は投資したい案件に出資します。
企業はこうして得た資金を使って不動産を購入し、入居者から得られる家賃などの利益を得ます。
企業は融資してくれた投資家に対して貸付金利を支払うので、結果的に不動産投資の利益の一部は、投資家に還元される仕組みです。
不動産投資との違い
不動産投資では、一人の投資家が不動産を購入し、入居者から家賃をもらったり、物件価格が上がってから売却したりすることで、収益を得る投資方法です。
不動産のソーシャルレンディングとの違いをまとめると次のようになります。
不動産投資の特徴 |
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不動産投資は個人が物件を購入するところから始めるので、ある程度の自己資金が必要になりますし、足りない分はローンを組まなければなりません。
不動産投資ローンは住宅ローンと違って審査が厳しいですし、不動産投資をやりたくても審査に落ちてできない人もいるでしょう。
その点、ソーシャルレンディングなら1万円や2万円といった少額でも不動産に投資することができます。
正確には不動産事業を行う会社への融資なので、直接不動産に投資するわけではありませんが、間接的な投資ができるという意味では、少額で気軽に不動産投資を始められると言えます。
REIT(不動産投資信託)との違い
小口で不動産投資を行うと言えば、「REIT(不動産投資信託)」という商品もあります。
小口で不動産に投資できる点がソーシャルレンディングとよく似ています。
REITは、不動産投資を行う会社が投資家から資金を集め、不動産の購入などの投資を行い、賃料収入や不動産の売却益を投資家に配当として支払う商品です。
また、証券取引所に上場しているという特徴があり、これがソーシャルレンディングとの大きな違いでもあります。
REITの場合、株式と同様に証券取引所への注文によって売買するため、REIT自体の値上がり・値下がりがあります。
日々値動きがあり、金融ショックや震災などのネガティブなことが起きると値下がりしてしまいます。
買ったときの値段よりも下がって含み損を抱えるリスクがあります。
一方で、配当だけでなく値上がりによる利益も得られるかもしれないメリットがあります。
また、REITはいつでも購入したり売却したりできます。
よほど人気がなくて買い手がつかない銘柄でなければ、基本的にはいつでも売却できることがメリットです。
ソーシャルレンディングは値動きがないため、値下がりによってストレスを抱えるリスクがありません。
一方で、融資の期限が終わるまでは解約できないので、途中でやめることができないデメリットもあります。
REITとソーシャルレンディングは小口で不動産に投資できる共通点がありますが、上記のとおり違いもあります。
どちらが自分に合っているか検討してから投資をしましょう。
不動産投資型クラウドファンディングとの違い
ソーシャルレンディングは、別名「融資型クラウドファンディング」と呼ばれているサービスです。
不動産のソーシャルレンディングとよく似ているものに「不動産投資型クラウドファンディング」があり、分かりにくいですがこれらは別物です。
主な違いは2つで、「投資の方法」と「法律」です。
投資の方法は、ソーシャルレンディングは「貸付」であり、不動産投資型クラウドファンディングは「投資」に近いです。
ソーシャルレンディングは貸付なので、不動産事業で収益が上がっているかどうかに関係なく、企業は調達した資金に金利を乗せてソーシャルレンディング会社や投資家に返済する必要があります。
不動産事業で失敗してしまっても、他の何らかの方法で資金を調達して、返済する必要があるのです。
したがって、企業の業績悪化などのトラブルがなければ、基本的には予定どおりの分配金が得られます。
一方の不動産投資型クラウドファンディングは、投資家を募集する際に公表された想定利回りが必ず守られるとは限りません。
投資が好調で予想より多くの家賃収入が入ってくれば、投資家に還元される分配金も多くなります。
逆もしかりで、想定利回りはあくまでも目安となります(ちなみに、REITも同様です)。
法律の観点では、ビジネスモデルの違いからサービス運営のために必要な資格が異なります。
ソーシャルレンディングは「第二種金融商品登録事業者」と貸金業への登録が必要です。
一方の不動産投資型クラウドファンディングは、「不動産特定共同事業」の許可が必要です。
ソーシャルレンディングは投資家から集めたお金で貸付を行い、不動産投資型クラウドファンディングは投資家から集めたお金で不動産を購入するという違いのため、従う法律が異なるのです。
不動産のソーシャルレンディングも不動産投資型クラウドファンディングも、小口で間接的に不動産投資ができる点では非常によく似ています。
細かい違いにこだわらない方もいらっしゃるとは思いますが、こんな違いもあるんだと頭の片隅に置いておいてください。
不動産のソーシャルレンディングを使うメリット
すでに他の投資方法の項目で触れたことも含め、あらためて不動産のソーシャルレンディングを使うメリットを整理していきましょう。
次の3つのメリットがあり、気軽に投資ができるサービスと言えます。
- 少額で不動産投資ができる
- 分散投資ができる
- 運用中に値動きしない
メリット①:少額で不動産投資ができる
不動産のソーシャルレンディングは、最低投資額が1万円から2万円に設定されていることが多いです。
少額で不動産投資ができることが大きなメリットになるでしょう。
個人で不動産投資をする場合は、数千万円から数億円といった不動産を取得するため、大きな資金が必要になります。
不動産投資ローンを組めるとはいえ、数百万円単位の自己資金があることが望ましく、また審査に落ちて投資を始められないリスクもあります。
ソーシャルレンディングなら1万円や2万円で始められるため、資金面のハードルが低く、不動産投資を始めやすいです。
メリット②:分散投資ができる
一つの案件に少額で投資できるため、分散投資がしやすいこともソーシャルレンディングのメリットです。
例えば、10万円の投資資金があったら、1万円で申し込める案件10個に分散投資することができます。
分散投資には、低リスクに運用できるというメリットがあります。
一つの投資先に集中投資してしまうと、その投資先が破綻したときにすべての資金がなくなってしまうかもしれないのですが、分散投資だとそのリスクを抑えることができます。
複数の投資先に分散しておけば、そのうち一つの投資先が破綻しても、資金全体としては小さなダメージで済むからです。
メリット③:運用中に値動きしない
REITとの比較で解説したように、ソーシャルレンディングは値動きしないメリットがあります。
REITだけでなく、株式投資や投資信託といった商品は値動きがあるため、毎日価格が変わります。
値動きに慣れていない投資初心者の方は、自分が買った後に少しでも値下がりしたら、不安で落ち着かなくなってしまうかもしれません。
その点、ソーシャルレンディングは商品の価格の値動きがありません。
価格変動がストレスになってしまう投資家の方にもおすすめできます。
不動産のソーシャルレンディングを使うデメリット
メリットがある一方、デメリットもあります。
不動産投資にソーシャルレンディングを使うデメリットを3つ紹介しましょう。
- 利回りは低め
- 貸し倒れ・遅延のリスクがある
- 途中で解約することができない
デメリット①:利回りは低め
ソーシャルレンディングは2パーセントから10パーセントほどの高い利回りを狙えるとして人気があります。
ただ、不動産事業の案件の場合、そこまでの高い利回りは見込めないことが多いです。
利回りが高い不動産投資案件もありますが、一般的には2パーセントから5パーセントからほどの利回りの案件が多いです。
そのため、ソーシャルレンディングの中ではローリスク・ローリターンの投資案件だと言えます。
ソーシャルレンディングがどんなものか試してみたい初心者の方にはおすすめですが、高い利回りを求めてソーシャルレンディングに行き着いた方には、別の投資先の方が向いていると言えるでしょう。
デメリット②:貸し倒れ・遅延のリスクがある
不動産事業に限らず、ソーシャルレンディングには貸し倒れや遅延のリスクがあります。
遅延とは、貸付先の企業が予定通りに金利を支払うことや、元本を返済することができなくなることです。
貸し倒れは、貸付先の企業の破綻などにより、金利や融資した元本の回収が難しくなることです。
貸し倒れや遅延が起きた場合、投資家が出資したお金は返って来ない可能性があります。
ソーシャルレンディング会社によっては回収に尽力してくれる会社もあるので、信頼できる会社を選んで投資しましょう。
デメリット③:途中で解約することができない
ソーシャルレンディングには、途中で解約できないというデメリットがあります。
急にお金が必要になったり、他に魅力的な投資先が見つかったとしても、途中でやめることはできないのです。
満期まで資金を引き出すことはできないので、計画的に運用する必要があります。
少なくとも、生活費などのすぐに必要になるかもしれないお金はソーシャルレンディングには使わず、余剰資金で投資しましょう。
不動産のソーシャルレンディングが向いている人
以上のメリット・デメリットを踏まえると、不動産のソーシャルレンディングが向いている人の特徴が見えてきます。
次の3つの特徴のいずれかに当てはまる方は、ソーシャルレンディングでの不動産への投資を検討してみてはいかがでしょうか?
- 低リスクの資産運用をしたい人
- 投資できる金額が1万円~10万円ほどの人
- 放置できる投資方法を探している人
低リスクの資産運用をしたい人
ソーシャルレンディングは一般的にはハイリスク・ハイリターンですが、不動産に関してはローリスク・ローリターンの案件が豊富です。
銀行預金よりは利回りが高く、でも元本割れのリスクが大きすぎない投資先を探しているという方にはおすすめです。
ただし、ソーシャルレンディングには貸し倒れや遅延による元本割れのリスクがあります。
ローリスク・ローリターンの案件でも、元本保証ではないことは理解しておいてください。
投資できる金額が1万円~10万円ほどの人
投資できる金額が1万円~10万円ほどの人にも、ソーシャルレンディングがおすすめです。
メリットで解説したように小口で投資できるので、投資資金が少ない方や少額で試してみたい方に向いています。
ちなみに、REITは10万円以上の資金があると選り取り見取りになります。
そこまでの資金はないという方には、ソーシャルレンディングがおすすめです。
放置できる投資方法を探している人
メリットで解説したように、ソーシャルレンディングには値動きがありません。
毎日価格を確認する必要がなく分配金は自動で入金されるので、投資家がわざわざチェックしなくても投資が進んでいきます。
その意味で、ほったらかしの投資をしたい人にもソーシャルレンディングはおすすめです。
ただし、運用報告書が送られて来たら目を通すようにしましょう。
特に、遅延や貸し倒れが発生している場合は報告書を読み、状況を理解しておいた方が良いです。
このような最低限のチェックは必要ですが、運用状況を毎日確認する必要はないという意味で、放置できる投資方法を探している人におすすめです。
不動産のソーシャルレンディングができる会社
最後に、不動産事業に投資ができるソーシャルレンディング会社をまとめておきます。利回りと最低投資額を一覧表でまとめたので、どの会社で投資を始めるか考えるヒントにしてください。
会社名 | 目安の利回り | 最低投資額 | 特徴 |
---|---|---|---|
CRE Funding | 3%前後 | 1万円 | 東証一部上場企業による保証つき |
OwnersBook | 3%~5% | 1万円 | 東証マザーズ上場企業が運営 |
LENDEX | 7%~12% | 2万円 | 短期の高利回り案件が豊富 |
Funds | 2%前後 | 1円 | 不動産以外の投資も可能 |
CREAL | 3%~7% | 1万円 | 投資対象の不動産の情報開示が詳細 |
※CREAL(クリアル)は不動産投資型クラウドファンディングですが、不動産に投資できるクラウドファンディングという意味ではソーシャルレンディングの会社と同様のため、一緒に比較しています。
CRE Funding
出典:CRE Funding
CRE Fundingは、不動産の中でも物流不動産に特化したソーシャルレンディングです。
物流不動産とは倉庫や物流センターのことで、最近のインターネット通販需要の増加が追い風となることが予想され、投資家たちが注目しているジャンルの不動産でもあります。
利回りは3%前後とあまり高くはありませんが、物流不動産は需要が安定しているため、投資先としても収益を得やすい傾向があります。
東証一部上場企業である株式会社シーアールイーの保証が付いているため、貸し倒れや遅延も発生しにくい仕組みとなっています。
ローリスク・ローリターンの投資をしたい方にぴったりのソーシャルレンディングと言えるでしょう。
OwnersBook(オーナーズブック)
OwnersBook(オーナーズブック)は、東証マザーズに上場しているロードスターキャピタル株式会社が運営するソーシャルレンディングサービスです。
すべての案件に不動産の担保がついているため、貸し倒れや遅延が起きたら売却され、その資金が投資家への返済に充てられます。
満額返ってくるとは限りませんが、ある程度の回収を見込める点では、低リスクな投資ができると考えられます。
ただし、運用期間が2年~3年に設定されている案件が多いため、途中で解約できないことを踏まえて案件を選びましょう。
以前、貸し倒れが発生した案件では迅速に対応し、保証人からの弁済を得られました。
このような実績があるため、信頼してOwnersBook(オーナーズブック)を使っている投資家もいます。
LENDEX(レンデックス)
LENDEX(レンデックス)は、予定利回り7パーセントから12パーセントと他の不動産のソーシャルレンディング会社よりも高い利回りが期待できることが特徴です。
なぜLENDEX(レンデックス)は他より高い利回りなのかと言うと、運用期間を短く設定していることが一つの理由として挙げられます。
短期の貸付にすることで、先の見通しを立てやすくしています。
1年以内に満期が来る案件が多いため、遅延や貸し倒れなどのトラブルが起こるリスクは低いです。
一方で、満期がすぐに来るのでその都度新しいファンドを選んで投資しなければならず、面倒に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
高い利回りを求めるなら使いたいサービスですが、好みも分かれると思います。
Funds(ファンズ)
引用:Funds(ファンズ)
Funds(ファンズ)は、不動産に限らずさまざまな企業への融資を行うソーシャルレンディングです。
貸付先は上場企業のみなので、遅延や貸し倒れは発生しにくいと考えられます。
Funds(ファンズ)は1円から投資ができるメリットがあるため、100円や1000円でソーシャルレンディングを試してみたい方に向いています。
また、一部の案件には優待もついています。
不動産では見かけないですが、飲食店を営業する企業へのソーシャルレンディングなら、割引サービスが受けられることもあるのです。
Funds(ファンズ)はより少額で投資をしたい方や、不動産以外のソーシャルレンディングにも興味がある人におすすめです。
CREAL(クリアル)
出典:CREAL(クリアル)
CREAL(クリアル)はソーシャルレンディングではなく不動産投資型クラウドファンディングです。
小口で不動産に投資できる点ではよく似ているため、併せて紹介します。
クリアルは2020年3月時点で遅延や貸し倒れが発生したことがなく、不動産の評価が適切にできていることが窺えます。
投資家への不動産の情報提供も、他のソーシャルレンディング会社よりも詳しい傾向にあります。
マンションだけでなく、学校やホテルなどさまざまな物件を扱っているのもクリアルの特徴です。
不動産投資の中でも業種を分散したい方に特におすすめです。
まとめ
不動産事業に投資ができるソーシャルレンディングについて解説してきました。
大金が必要な不動産投資ですが、ソーシャルレンディングでは小口に分けることで資金面のハードルを下げています。
1万円から投資できるサービスも多く、基本的にはローリスク・ローリターンの案件が多いので、投資の初心者でも始めやすいでしょう。
もう少し深くソーシャルレンディングについて知りたい方は、こちらで詳しく解説していますよ。