2020年に入り発生した新型コロナウイルスは、世界中に伝播し実態経済に大きな影響を与えています。
一方で、日本の株式市場は2020年3月に大きな下落を見せましたが、4月に入ってからは経済対策が発表されたこともあり、落ち着きを見せています。
そこで気になるのは、2020年4月の日本のソーシャルレンディング市場はどうだったという点。
ここでは、ソーシャルレンディング市場の動向をレポートしていきます。
目次
2020年4月の募集実績
まずは、2020年4月に各ソーシャルレンディング会社が実際に行った募集案件を調査し、総額をまとめました。
社名 | 募集実績 |
---|---|
SBIソーシャルレンディング | 1,500,000,000円 +不動産担保ローン事業者ファンド |
Crowd Bank(クラウドバンク) | 1,199,400,000円 |
Funds(ファンズ) | 179,000,000円 |
OwnersBook(オーナーズブック) | なし |
Crowd Credit(クラウドクレジット) | 640,000,000円 |
LENDEX(レンデックス) | 269,070,000円 |
ポケットファンディング | 93,020,000円 |
ネクストシフトファンド | 12,000,000円 |
CRE Funding | 60,000,000円 |
(2020年4月に募集が行われた案件の募集金額合計)
SBIソーシャルレンディング
2020年4月のSBIソーシャルレンディングの募集案件は、いずれも不動産担保付きのファンドです。
太陽光発電関係のファンドの募集は行われていません。
また、ここで挙げた案件の数字以外にも、常時募集ファンドである不動産担保ローン事業者ファンドがあるため、実際の募集金額は20億円以上になるものだと思われます。
Crowd Bank(クラウドバンク)
Crowd Bank(クラウドバンク)では、
- 太陽光発電関係の案件
- カリフォルニアの不動産担保付案件
- 香港の金融事業者向けの案件
の3種類の案件募集が行われました。
案件は42件、総額は12億円弱と、募集金額はSBIソーシャルレンディングに次ぐ数字です。
利回りは5パーセントから7パーセントと、Crowd Banck(クラウドバンク)の標準的な水準であり、特に景気の影響を受けず通常通りの募集が行われています。
クラウドバンクには、コロナショックの影響は出ていないと捉えることができるでしょう。
もちろん、返済遅延や貸し倒れも発生していません。
Funds(ファンズ)
引用:Funds(ファンズ)
融資先を上場企業に限定しているという特徴を持つFunds(ファンズ)。
Funds(ファンズ)が2020年4月に募集を行った案件は4種類です。
そのうち3案件は、不動産関係の会社への融資です。
一方、パン販売店の運営資金の募集というFunds(ファンズ)ならではの個性的な案件の募集も行われました。
パン販売店で買い物をした際に、10パーセント割引になるという特典が付いています。
Funds(ファンズ)では、「抽選募集」と「先着募集」の2種類の募集を並行して行なっていますが、どの案件でも抽選募集は募集金額を遥かに超える応募が入っています。
2020年4月の募集金額は2億円に満たないですが、案件の組成数は徐々に増えています。
投資家からの投資意欲も高く、Funds(ファンズ)にもコロナショックの影響は見られません。
OwnersBook(オーナーズブック)
ソーシャルレンディング会社の中でも、唯一上場企業が直接運営を行っているのがOwnersBook(オーナーズブック)です。
OwnersBook(オーナーズブック)を運営するロードスターキャピタル株式会社は、不動産開発および不動産販売事業を手掛けています。
それだけに、OwnersBook(オーナーズブック)の全案件に不動産担保が設定されており、投資家から高い信頼を得ています。
2020年4月の実績ですが、OwnersBook(オーナーズブック)では1件の募集もありませんでした。
OwnersBook(オーナーズブック)は一案件の募集金額は1億円を超えるものが多いですが、案件の募集頻度はそこまで高いわけではありません。
なお、既募集案件の返済遅延や貸し倒れは発生していません。
Crowd Credit(クラウドクレジット)
海外案件を専門に取り扱うソーシャルレンディングサイトとして高い知名度を持つCrowd Credit(クラウドクレジット)。
Crowd Credit(クラウドクレジット)は世界各国でソーシャルレンディング案件の組成を行っており、途上国から先進国までさまざまな国にクラウドクレジットを通じて投資することができるのです。
Crowd Credit(クラウドクレジット)では、2020年4月も30件と、多様な案件の募集が行われました。
募集金額規模は6億4,000万円であり、SBIソーシャルレンディング、そしてクラウドバンクに次ぐ規模となっています。
しかし、実際に集まった金額は2億6,730万円です。
ただし、Crowd Credit(クラウドクレジット)の案件は、募集金額に対して満額に満たない案件も多くなっており、実際に投資家から集まった資金は2億6,700万円です。
コロナショックの影響は全世界に及んでいるだけに、日本から見て現地の情報を知ることが難しい海外案件は、投資を敬遠した人が多いのかもしれません。
また、2020年3月、Crowd Credit(クラウドクレジット)で3年以上返済遅延が続いていた、カメルーン案件が最終的に貸し倒れに終わりました。
投資家に対しては、平均投資金額の60パーセントほどの返済が行われました。
その貸し倒れの発生が、投資家のクラウドクレジットに対するリスクの見方に影響を与えたのかもしれません。
少なからず、コロナショックの影響を受けているソーシャルレンディング会社だと言えそうです。
LENDEX(レンデックス)
LENDEX(レンデックス)は大半の案件に不動産担保を設定し、また10パーセント以上の高い利回りを提供しているソーシャルレンディングサイトです。
LENDEX(レンデックス)は2019年後半から、会員数・募集金額ともに大幅な増加を見せており、今好調なソーシャルレンディングサイトの一つと言えるでしょう。
2020年4月の募集実績見ると、募集件数は9件、募集金額は2億6,97万円となっています。
2月・3月と5億円以上の募集を行っていたことと比較すると、やや募集金額は小さめです。
4月に関しては、2億円を超えるような大規模案件の募集がなかったことが募集金額減少の要因と言えるでしょう。
一方で、どの案件も募集開始からわずか数分で満額に達しており、投資家からの人気は非常に高いことがわかります。
推測にはなりますが、コロナショック下の不透明な市況を見て大規模な不動産開発案件はリスクが高いものと捉え、数千万円の中規模程度の案件募集を行うようにしているのかもしれません。
募集自体は、大変に調子が良いです。
ポケットファンディング
出典:ポケットファンディング(Pocket Funding)
ポケットファンディングは、沖縄に本社を構えるソーシャルレンディングサイトです。
ポケットファンディングは2020年4月には3案件の募集を行い、9,302万円を集めました。
いずれも沖縄県内の不動産を担保とした案件であり、利回りは7パーセントと比較的高めの数字です。
一方で、沖縄県の産業は観光業が占める割合が高く、コロナショックの影響を大きく受ける土地です。
コロナショックの影響が長引けば、沖縄県内の産業が悪化し不動産価格も下落する可能性があるでしょう。
現状では大きな影響は出ていませんが、これから先沖縄県内の案件の動向には注意を払っておく必要がありそうです。
ネクストシフトファンド
出典:ネクストシフトファンド
クラウドクレジットと同じく、海外案件を専門に扱うソーシャルレンディングサイトがネクストシフトファンドです。
ネクストシフトファンドの案件は、すべて発展途上国のマイクロファイナンス機関への融資案件です。
2020年4月には2件の募集が行われました。
合計金額は1,200万円と小規模ですが、利回りは7パーセント以上のものもあり、日本国内のソーシャルレンディング案件よりもやや高めの数字です。
ここ数ヶ月は、このペースでの募集が続いています。
CRE Funding
出典:CRE Funding
CRE Fundingは、2020年2月から運営が開始された日本国内でも最も新しいソーシャルレンディングサイトです。
案件の組成は東証一部上場企業である不動産会社、株式会社シーアールイーが行なっています。
2020年4月に募集が行われたのは2案件。
募集の合計金額は6,000万円です。
いずれも株式会社シーアールイーが取り扱っている、物流不動産を対象にした案件です。
物流不動産は人々の生活に密着した不動産であるため、収益が景気の影響を受けにくいことが特徴です。
コロナショックの影響を受けにくい投資先を選びたい時は、CRE Fundingの物流不動産案件に投資してみると良いかもしれません。
CREAL(クリアル)
出典:CREAL(クリアル)
ソーシャルレンディングではありませんが、CREAL(クリアル)も多くの投資家に利用されている「不動産投資型クラウドファンディング」としてここで紹介します。
2020年4月にCREAL(クリアル)で募集された案件は、保育園開業の資金募集案件のみです。
募集金額規模は4億6,900万円と大規模なものでした。
また、利回りが6パーセントとこれまでCREAL(クリアル)で募集が行われた案件では最も高い利回りです。
ただし、投資家への配当が入るのは運営開始から1年後となっているため、すぐに配当が欲しい投資家にとってはやや不満が残る案件とも言えます。
2020年5月1日時点ではまだ満額に渡していませんが、過去のCREAL(クリアル)の案件と比べると、資金が集めるペースも速く好調な推移を見せています。
2020年4月のソーシャルレンディングニュース
2020年4月のソーシャルレンディング業界では、どのような出来事があったでしょうか?
代表的なニュースを振り返ってみましょう。
ニュース①:コロナショックでの貸し倒れや返済遅延は未発生
コロナショックの影響により、観光業や飲食業などで倒産する会社が多数発生しているとの報道が行われています。
そんな中でも、2020年4月中のソーシャルレンディング案件での貸倒れ、返済遅延件数はいずれもゼロ件です。
2019年の夏以降、新規募集が行われたソーシャルレンディング案件での貸し倒れや返済遅延はゼロ件という状況がずっと続いています。
他の投資商品が大幅な相場の下落を見せ、損失を被る投資家がいる中、ソーシャルレンディングは健闘していると言えます。
ただし、2020年5月以降の動向については未知です。
今後返済遅延や貸し倒れが発生しない保証はもちろんありません。
ニュース②:クラウドバンクがコロナショック支援ファンドを募集
Crowd Bank(クラウドバンク)は、コロナショックで金銭的な被害を受けた法人への支援を目的としたファンドの募集を行うと発表しました。
Crowd Bank(クラウドバンク)が案件を組成し投資家から資金を集め、資金が必要な事業者に3パーセントから4パーセントと低めの金利で融資を行います。
当該案件は担保を設定しない代わりに、クラウドバンクが20パーセントの劣後出資を行うことで投資家のリスク対策を行っています。
さらに、Crowd Bank(クラウドバンク)の営業報酬はわずか金利0.1パーセントです。
Crowd Bank(クラウドバンク)は利益を得るためではなく、資金調達に窮する企業を支援することのみを目的としています。
コロナショックの状況下では、他社からもこういった支援ファンドの募集が出てくる可能性もあるでしょう。
ニュース③:FundsがクラウドポートをRelicへ譲渡
Funds(ファンズ)を運営する株式会社ファンズは、元々は「クラウドポート」というソーシャルレンディング・クラウドファンディングのメディアサイトを運営していました。
そのクラウドポートが、2020年4月にRelicというクラウドファンディングのプラットフォームサービスを運営する会社に譲渡されました。
譲渡に伴い、サイト名も「クラウドポート」から「Fintenna(フィンテナ)」に変更されました。
クラウドポートでは2019年秋から記事の更新が止まっていましたが、Relicに運営元が変更されたこともあり更新されています。
RelicがFintennaを運営することでクラウドファンディングに関する情報発信を行い、自社のクラウドファンディングプラットフォームの知名度を高める狙いを持っています
今後も積極的な情報発信が行われていくでしょう。
まとめ:2020年4月のソーシャルレンディング市場総評
2020年4月のソーシャルレンディング市場では、返済遅延や貸し倒れは未発生でした。
コロナショックの状況下であっても、ソーシャルレンディングは堅調に運営されており、投資先としての保全性の高さが伺える結果となったのです。
一方、2020年4月の募集金額は、ここに挙げたサイトを合わせても50億円未満と、あまり大きくありません。
ソーシャルレンディング会社各社でも案件の組成に対しに苦労している、もしくは慎重な姿勢で臨んでいるとの見方ができそうです。
しばらくは、案件募集ペースを抑える方針が続いていくのかもしれません。
また、海外案件に対する投資家の視線が厳しくなり、海外案件を中心とするソーシャルレンディングサイトがやや苦戦している様子が見て取れます。
コロナウイルス感染者数は世界中で抑制されつつありますが、経済活動の万全な復活がいつになるかはわかりません。
投資家はリスクの低い案件を選びながら、今はリターンよりもリスク対策を中心に投資していくことが予測されます。