目次
ソーシャルレンディングの海外案件
ソーシャルレンディング会社が提供する案件の中には、「日本国内で運用される案件」と「海外とで運用される案件」があります。
日本国内の案件と海外案件にはどういった違いがあるのか、また海外の案件に投資するメリットについて気になる人もいるでしょう。
そこで、ここではソーシャルレンディング会社が提供する海外案件の特徴について解説していきます。
特徴①:海外の事業者への融資案件
ソーシャルレンディングの海外案件とは、海外に本社を構える法人や個人への融資です。
そのため、会社がある国の影響を強く受けますし、日本国内の案件とは適用される法律が異なります。
また、国によっては日本と商習慣が大きく異なる場合もあるのです。
特徴②:日本の貸金業法の影響を受けない
日本国内の会社に融資した場合、「貸金業法」という日本の法律に則った運用が行われます。
しかし、海外案件はその国の法律に則って運用が行われます。
日本の貸金業法では、100万円以上の融資を行った場合、最大金利は15パーセントに設定されます。
そのため、国内のソーシャルレンディングの案件において8パーセントを超えるような高い利回りのものはわずかです。
一方、海外の事業者の場合、日本の貸金業法とは無関係です。
場合によっては15パーセントを超えるような金利を設定できる国もあるのです。
そのため、最近では日本国内で運用される案件の利回りよりも、海外で運用される案件の利回りの方が高くなりつつあります。
国内・海外案件のスキームの違い
ソーシャルレンディングの運用に関する法律が異なるため、そのお金の流れ、つまりスキームが日本の案件と海外案件では異なることがあります。
では、どういった点が異なるのかについて解説していきましょう。
国内案件の場合
国内の案件(ファンド)の場合、「第二種金融商品取引業」に登録を行ったソーシャルレンディング会社が、まずはインターネット上で投資家から資金を集めます。
そして、お金を必要とする会社に金利を上乗せして融資します。
その「金利」が投資家の分配金やソーシャルレンディング会社の利益になります。
海外案件の場合
海外案件(ファンド)でも、アメリカなどの先進国で運用される場合のスキームは、日本とほぼ変わりません。
ソーシャルレンディングはアメリカで生まれた投資の仕組みであり、それを日本ソーシャルレンディング会社が参考にしているからです。
しかし、発展途上国となるとまた事情が異なります。
発展途上国のファンドの融資先は一定以上の規模を持った法人ではなく、個人や小規模事業者への融資が多いです。
そういった事業者に融資する場合、途上国ならではの金融機関であるマイクロファイナンス機関が間に入ります。
海外案件でも、まずは日本国内のソーシャルレンディング会社が投資家からお金を集めます。
ここは、国内案件も海外案件も変わりません。
この先からが異なる点です。
投資家から集めたお金を、ソーシャルレンディング会社が途上国のマイクロファイナンス機関に融資します。
そして、マイクロファイナンス機関が個人や小規模事業主に融資します。
また、マイクロファイナンス機関が融資先の個人などから資金回収を行い、ソーシャルレンディング会社に返済するという流れになっているのです。
ソーシャルレンディングの海外案件のメリット
ソーシャルレンディング投資家の方が気になる点は、海外案件にはどういった特徴やメリットがあるかでしょう。
海外案件ならではのメリットを紹介しましょう。
メリット①:利回りが高いものがある
海外の案件の中には、利回りが5パーセントから10パーセントと日本国内のソーシャルレンディングの案件よりも高いものがあり、平均的な利回りは6パーセント前後です。
日本国内のソーシャルレンディングの平均的な利回りは、2020年現在で5パーセント前後であるため、海外案件の方がやや高いと言えます。
収益を求めるのであれば、海外の案件に投資することを考えてみても良いでしょう。
メリット②:分散投資できる
さまざまな国に分散投資できることも、海外の案件のメリットです。
1ヶ国に投資して経済事情が悪化した場合、投資中のすべての案件で損失が発生する可能性があります。
そこで、投資する国を分散しておけば、リスクの規模は限られたものになります。
例えば、投資した案件が日本国内のみの場合、日本でバブル経済のような経済危機が起きたときに、投資中の案件すべてに影響が出る可能性があります。
しかし、
- 日本:30%
- アメリカ:20%
- 途上国:50%
などのように投資を分散しておけば、それぞれの国で経済的な問題が起きたときでも、被る損失の額を抑えることができます。
海外の案件に分散投資をすれば、リスク対策できるメリットがあるのです。
メリット③:為替変動益を期待できる
海外案件は、為替の変動による利益が発生するがあります。
海外案件は、日本円ではなく米ドルや各国の通貨で運用されることが多いからです。
通貨の相場は、市場の取引によって日々変動しています。
そのため、海外通貨で運用される案件は相場の変動によって利益を得られる可能性があるのです(「為替差益」と呼びます)。
例えば、米ドル建てで運用される案件に100万円を投資したとしましょう。
「1ドル=100円」の場合、100万円は1万ドルに両替されて運用されます。
運用終了後、1万ドルは日本円に両替され投資家に返還されます。
もし、そのときの為替が「1ドル=110円」と円安に動いていれば、両替することで1万ドルは110万円に両替されます。
つまり、為替が動いただけで、何もせずに10万円の利益を得ることができるのです。
ソーシャルレンディングの海外案件のデメリット・リスク
ソーシャルレンディングの海外案件には、もちろんデメリットやリスクがあります。
投資の前には、メリット以上にリスクについて十分知っておく必要があります。
それでは、海外案件ならではのデメリットを紹介しましょう。
リスク①:担保や保証が弱い
海外の案件の中でも、途上国の案件は担保や保証がついていないことがほとんどです。
融資を受ける個人や小規模事業者が、担保や保証になる資産を持っていないからです。
つまり、返済不能に陥った場合、損失が発生する可能性が高いのです。
また、貸金に関する法律が整備されていない国では、融資を受けた会社が姿をくらましてしまったり、担保が虚偽であったりした事例も発生しています。
アメリカ不動産案件などは、不動産担保が設定されてるので資産の保全性は高いです。
リスク②:カントリーリスクがある
海外の案件は、それぞれの国の事情でリスクが変わることがあります。
例えば、日本国内の案件には「地震」という日本特有のカントリーリスクがあります。
日本は大地震が発生しやすいので、大地震により不動産が大きな被害を受ける可能性があります。
アメリカの場合、ハリケーンによって建物が倒壊して使えなくなることがあります。
これは、アメリカならではのカントリーリスクです。
途上国では政情不安によって通貨の変動が激しくなったり、紛争に巻き込まれたりすることもあるかもしれません。
こういったその国ならではのリスクで、案件の運用が正常に行われなくなることがあります。
投資前には、その国でどのようなリスクが起こり得るのかは確認しておいた方が良いでしょう。
リスク③:為替変動で損失が出る可能性がある
メリットの項目では、「為替の変動によって利益が出る」可能性についてお伝えしました。
しかし、自分の思惑とは逆に相場が動けば、損失が発生することもあります(「為替差損」と呼びます)。
先ほどと同じ例で、1ドル=100円の際に運用を始め、運用終了の段階で1ドル=90円の円高になっていれば、10万円の損失が発生してしまいます。
為替の変動はメリットばかりではなく、投資家に損失を与える危険性もはらんでいます。
海外案件のリスク対策
ソーシャルレンディングの海外案件は、日本国内の案件にはないリスクも存在しています。
では、リスク対策を行うにはどうしたら良いでしょうか?
リスク対策①:分散投資する
まず行うべきリスク対策は、複数の投資案件への分散投資です。
分散投資をすれば、一度に多額の資金を失うリスクを避けられるからです。
例えば、100万円の投資資金がある場合、1案件に100万円を投資するのではなく、10万円ずつ10案件に投資するなど、少しずつ資金を投資する方法です。
そうすれば、仮に1案件で貸し倒れが起きたとしても、損失は最大で10万円で済みます。
分散投資することで、リスクの幅を小さくすることができるのです。
リスク対策②:マイクロファイナンス機関への融資案件に投資する
「マイクロファイナンス機関」への融資案件に投資することも、リスク対策には重要です。
なぜなら、マイクロファイナンス機関への投資は自動的に分散投資されるからです。
マイクロファイナンス機関は、小規模事業者や個人事業主専門の融資を行う金融機関です。
マイクロファイナンス機関が関わる案件に投資すれば、実際の貸付先は複数の小規模事業者などになります。
マイクロファイナンス機関の案件は、貸し倒れが数パーセント発生することを前提にファンドを組成しています。
そのため、貸し倒れが出ても利益を確保できるのです。
また、マイクロファイナンス機関は、国が定めた信用性の高い金融機関であるため、倒産の可能性が低いです。
リスク対策③:為替ヘッジ付き案件を選ぶ
海外案件は、相場の変動で利益が発生することも損失が発生することもあることはお伝えしました。
そこで、為替変動で利益が左右するのは嫌だという方は「為替ヘッジ付き案件」を選びましょう。
ソーシャルレンディングにおける為替ヘッジとは、案件の運用終了時に同じ為替相場で両替する権利を手数料を支払って確保することです。
そのため、為替ヘッジ付き案件を選べば為替変動リスクは避けられ、相場変動による損失を防げます。
ただし、手数料がかかるため、利回りはやや低くなります。
海外案件を扱うソーシャルレンディングサイト
これまで、ソーシャルレンディングの海外案件について詳しく解説しました。
では、海外案件を扱うソーシャルレンディングサイトにはどういった会社があるのでしょうか?
ソーシャルレンディング会社によって、扱う案件の国、条件、リスクなどがそれぞれ異なります。
では、日本のソーシャルレンディング会社で海外案件を扱っているところを、その特徴を踏まえながら紹介しましょう。
Crowd Credit(クラウドクレジット)
クラウドクレジット(CrowdCredit)は、海外の案件を専門に取り扱うソーシャルレンディング会社です。
高い知名度を持ち、累計報酬金額は280億円以上です(2020年2月末時点)
また、案件の運用国は30ヶ国を突破しており、先進国から途上国まで幅広いことが特徴です。
海外案件の中には、日本国内の案件では見られないない「個人向けの融資」の案件もあるなど、ユニークなものも多いです。
また、期待利回りは10パーセントを超える案件もあります。
ただし、貸し倒れや一部の損失の発生割合が運用中の案件で4パーセント以上とリスクも高めです。
その対策として、クラウドクレジットは2020年1月から手軽に分散投資ができる「ファンドパッケージ」という投資商品の提供を始めました。
ファンドパッケージとは、複数の案件を組み合わせてパッケージ化した案件のことであり、一つの案件に投資するだけで自動的に複数の案件に分散することができる仕組みになっています。
一部の案件で損失が起こることを前提に可能な限り分散投資をしていけば、結果的に高い利回りを得ることも難しくないでしょう。
OwnersBook(オーナーズブック)
出典:OwnersBook(オーナーズブック)
オーナーズブックの海外の案件は、海外で運用されるREITを対象としたものです。
利回りは5パーセントと、オーナーズブックの案件の中では高めの利回りとなっています。
ただし、運用期間が60カ月以上と、かなりの長期案件です。
その点が投資家のリスクになる可能性があります。
募集される頻度は低く、これまでの海外案件の募集はその1件のみです。
Crowd Bank(クラウドバンク)
出典:Crowd Bank(クラウドバンク)
クラウドバンクの海外の案件は、アメリカの不動産案件と香港の金融機関が中心です。
定期的に募集が行われています。
利回りは5パーセントから7%となかなか高い数字です。
クラウドバンクの海外案件最大の特徴は、米ドル建てであることです。
運用が終わった後も自動的に日本円に両替されるのでなく、米ドルで返還されます。
案件終了時の円・ドルの相場で損失が発生していても、相場が動き利益が出るのを待ってクラウドバンクのサイト内で両替できます。
そのため、それほど為替変動のリスクを気にしなくて済むのです。
米ドルのまま資産を保持して再投資するなど、柔軟性の高い運用ができます。
ネクストシフトファンド
出典:ネクストシフトファンド
ネクストシフトファンドは、途上国のマイクロファイナンス向けの案件を専門としています。
利回りは5パーセント~7パーセントほどと高く、収益を求めるのであれば十分に投資する価値があるでしょう。
累計報酬金額は実績値で1億5,000万円、会員数は1,000人ほどとまだ小規模なソーシャルレンディングサイトですが、これから先の成長が期待できるサイトです。
CAMPFIRE Owners(キャンプファイヤーオーナーズ)
出典:CAMPFIRE Owners(キャンプファイヤーオーナーズ)
CAMPFIRE Owners(キャンプファイヤーオーナーズ)も、途上国のマイクロファイナンス向けの案件を取り扱っています。
ネクストシフトファンドと同じく、カンボジアのマイクロファイナンス機関への融資を行っています。
そのため、運用期間や利回りなどの各種条件は、ネクストシフトファンドとほぼ同じです。
2020年3月時点の募集実績はまだ2回だけですが、今後の動きに期待しましょう。
【総評】ソーシャルレンディング海外案件へ投資する価値は?
ソーシャルレンディングの海外案件への投資は、これから先のリスク対策を考えれば、ぜひ検討しておきたいと言えるでしょう。
日本国内のソーシャルレンディングの案件は、最近ではローリスク・ローリターンの案件が求められるようになってきたこともあり、利回りはやや低下しています。
海外案件に分散投資をすることで、リスク対策になるだけではなく収益性アップの取り組みもできるのです。
一方で、海外の案件は担保や保証がないため、危険ではないかと考える人もいるでしょう。
クラウドクレジットやネクストシフトファンドでは、これまでマイクロファイナンス機関向けの案件は、貸し倒れを発生させたことはなく、優秀な運用結果を出してきたのです。【サービスサイト】ポケットファンディング(Pocket Funding)
マイクロファイナンス機関の案件は自動的に分散して投資されるため、一部で貸し倒れが起きたとしても、総合的にみて利益を獲得しやすいと言えます。
また、途上国の案件は社会貢献できるというメリットがあります。
海外の案件に投資すれば、日本国内の案件だけでは得られないさまざまなメリットが得られるのです。
まとめ
海外案件を取り扱うソーシャルレンディング会社は、近年徐々に増えつつあります。
海外案件を専門とする会社、そして案件の中で一部海外の案件を扱う会社といったようにそれぞれ違いがあります。
海外という投資の選択肢が増えることは、投資家にとっては良いことでしょう。
それだけに迷ってしまう人もいるかも知れません。
そこで、しっかりと投資先のことを学び、自分の投資する目的や求める収益性を叶えてくれる案件を選べるようになっていきましょう。