クラウドアンサーでは、毎月のソーシャルレンディングの市場及び募集規模、各社の案件、ソーシャルレンディング会社初のニュース記事をまとめ、毎月初旬に発表しています。
ここでは、2020年6月の日本のソーシャルレンディング市場の動向について、独自に調査した内容をお伝えしていきます。
目次
2020年6月の主要ソーシャルレンディング会社の募集実績
2020年6月の主要ソーシャルレンディング会社・不動産投資型クラウドファンディングによる募集金額の総額は、62億8,392万円+380,000ドルでした。
その内訳は次のとおりです。
社名 | 募集実績
(5月) |
募集実績
(6月) |
通貨 |
---|---|---|---|
SBIソーシャルレンディング | 2,347,800 | 1,230,000 | 千円 |
Crowd Bank(クラウドバンク) | 1,361,000 | 3,334,450 | 千円 |
640 | 380 | 千ドル | |
Funds(ファンズ) | 279,000 | 250,000 | 千円 |
OwnersBook(オーナーズブック) | 160,000 | 0 | 千円 |
Crowd Credit(クラウドクレジット) | 385,000 | 230,000 | 千円 |
LENDEX(レンデックス) | 340,770 | 290,130 | 千円 |
ポケットファンディング | 53,140 | 44,340 | 千円 |
ネクストシフトファンド | 0 | 0 | 千円 |
CRE Funding(シーアールイーファンディング) | 35,000 | 31,000 | 千円 |
SAMURAI FUND(サムライファンド) | 75,000 | 385,000 | 千円 |
J.lending(ジェイレンディング) | 130,000 | 130,000 | 千円 |
CREAL(クリアル) | 0 | 359,000 | 千円 |
2020年6月に募集が行われた案件の募集金額合計:クラウドアンサー調べ
さらに金額が公表されていない、SBIソーシャルレンディングの「常時募集ファンド」を含めれば、最終的な募集総額は70億円を超えるものになると思われます。
2020年5月の募集金額が50億8,771万 円でしたから、20パーセント以上の伸びを見せたことになります。
クラウドバンクが約20億円も募集金額を伸ばしたことが、この市場を牽引したと言えるでしょう。
では、各ソーシャルレンディングサイト別の募集状況を見ていきます。
SBIソーシャルレンディング
SBIソーシャルレンディングのオーダーメード型ファンドは、次の2件の募集でした。
SBIソーシャルレンディングの6月の募集案件
- SBISL不動産担保ローン事業者ファンドNeo 14号
- SBISL不動産バイヤーズローンファンド38号
この2件で12億3千万円であり、5月に比べれば約10億円の減少です。
ただし、SBIソーシャルレンディングには常時募集ファンドがあるため、その分を含めれば20億円は突破していると見られます。
Crowd Bank(クラウドバンク)
2020年5月と比較し、大きく数字を伸ばしたのがクラウドバンクです。
主なファンドは次のとおりです。
Crowd Bank(クラウドバンク)の6月の募集案件
- スター・マイカ・ホールディングス【東証一部上場】コラボレーションファンド第8号
- 米ドル建カリフォルニア不動産ローンファンド第203号
- 太陽光発電ファンド第1872号
上場企業であるスター・マイカ・ホールディングス【東証一部上場】コラボレーションファンドが久しぶりの登場となりました。
また、米ドル建て案件でも38万ドルの募集を行っています。
Funds(ファンズ)
引用:Funds(ファンズ)
上場企業や有力ベンチャーへの融資案件中心のFunds(ファンズ)。
2020年6月は5月とほぼ同規模の金額の2億5千万円を集めました。
Funds(ファンズ)の6月の募集案件
- リースバック事業「あんばい」ファンド#8
- GranDuoファンド#2
利回りは1.6パーセント~2.2パーセントと低い数字ながら、高い人気を誇っています。
OwnersBook(オーナーズブック)
不動産を専門に扱うOwnersBook(オーナーズブック)は、東証マザーズ上場企業のロードスターキャピタル株式会社が運営しています。
2020年6月は1件も案件の募集を行いませんでした。
2020年5月の募集総額も1億6千万円と低調気味であり、ここ最近の動きは静かです。
Crowd Credit(クラウドクレジット)
海外案件を専門に取り扱うCrowd Credit(クラウドクレジット)では、次のような案件の募集が行われました。
クラウドクレジット(Crowd Credit)の6月の募集案件
- バランス型パッケージ12号
- 社会的インパクト重視型パッケージ6号
- 中東地域ソーラー事業者支援ファンド16号
世界的な影響のあるコロナショック下では、クラウドクレジットの案件の組成もあまり進んでいるようではありません。
月間で約20件、金額にして2億3千万円の募集でした。
LENDEX(レンデックス)
不動産案件を中心に扱うLENDEX(レンデックス)。
2020年6月は5月よりやや減少し、約2億9千万円の募集結果となりました。
LENDEX(レンデックス)の6月の募集案件
- 不動産担保付きローンファンド155号
- ローンファンド154号
担保なし・保証付き案件である「ローンファンド」の割合が高くなっています。
ポケットファンディング
出典:ポケットファンディング(Pocket Funding)
沖縄の不動産案件を中心としているポケットファンディングでは、次の案件の扱いが行われました。
ポケットファンディング(Pocket Funding)の6月の募集案件
- 沖縄ファンド6号【不動産担保付】
- 沖縄中部ファンド26号【一部不動産担保付】
- 東京不動産ファンド3号【一部不動産担保付】
同社では珍しい、東京の不動産案件の募集もあり約4,400万円を集めています。
ネクストシフトファンド
出典:ネクストシフトファンド
海外途上国案件を専門とするネクストシフトファンド。
2020年5月に続き、6月も案件の募集はありませんでした。
クラウドクレジットと同様に、コロナショック下では海外案件の組成が困難になっているのかもしれません。
CRE Funding
出典:CRE Funding
東証一部上場企業である不動産会社、株式会社シーアールイーが案件の組成を行うCRE Funding。
同社の募集は、5月と同じく1件であり、金額は3,000万円ほどでした。
今後の募集規模の増加に期待が高まります。
CREAL(クリアル)
出典:CREAL(クリアル)
2020年5月は1件の募集もなかった不動産投資型クラウドファンディングサイトCREAL(クリアル)ですが、2020年6月は東京両国のオフィスビル案件の募集を行いました。
約3億6千万円の大型案件ながら、利回りも同社では最高値の6.5パーセント案件だったこともあり、1時間たらずで満額を集めることに成功しています。
J.LENDING
出典:J.LENDING
不動産案件を中心に扱うJ.LENDINGでは2020年6月に3案件の募集が行われました。
J.LENDINGの6月の募集案件
- J.LENDING – LF15号
- J.LENDING – LF16号
- J.LENDING – LF17号
募集金額は3件合わせて1億3千万円と、ここ数ヶ月は募集金額が上昇傾向です。
SAMURAI FUND
保証会社の保証付き案件などを扱うSAMURAI FUND。
2020年6月は、人気の保証付き案件中心に6件、総額で3億8,500万円の募集が行われました。
SAMURAI FUNDの6月の募集案件
- 「日本の企業を元気に!」 事業支援ファンド9号
- 日本保証 保証付きファンド9号
- 日本保証 保証付きファンド8号
ただし、満額募集に至らなかった案件もあるなど、やや苦戦している模様です。
2020年6月のソーシャルレンディングニュース
続いては、2020年6月に起こったソーシャルレンディング業界関連のニュースを振り返ってみましょう。
ニュース①:募集規模総額は6月より増加した
ソーシャルレンディング市場全体の動向を見ると、2020年5月と比較し2020年6月は約10億円ほど募集金額が増加しています。
クラウドバンクが募集金額の数字を大きく伸ばしたことが結果に影響しています。
SBIソーシャルレンディングは10億円ほど数字を落としていますが、クラウドバンクの20億円増という数字が、市場全体をカバーしています。
SBIソーシャルレンディング、クラウドバンク大手2社の動きにより、市場規模が左右される結果が浮き彫りとなりました。
その他、毎月数億円規模のソーシャルレンディングサイトの動向に大きな変化ありませんが、クラウドクレジットの数字の落ち込みが目立ちます。
ニュース②:CREALが1時間で3億6千万円を集めた
2020年5月には一案件の募集もなかった不動産投資型クラウドファンディングサイトCREAL(クリアル)。
浅草のホテル案件など、観光客数減少の影響で売上が低下している案件もあり、会社の存続自体が不安視されていた側面もあります。
しかし、2020年6月には両国駅前徒歩2分という抜群の立地のオフィスビル案件を組成しました。
わずか1時間足らずで満額を集める結果となリ、投資家に好評をもって迎えられました。
多様な不動産案件を取り扱うCREALの強みが出た結果だと言えます。
ニュース③:クラウドバンクの案件で遅延が発生した
日本国内の累計募集実績第2位を誇るクラウドバンク。
これまで貸し倒れを発生させたことは一度もなく、返済遅延の発生も一度のみでした。
しかし、2020年6月にカリフォルニア不動産ローンファンドで複数形の遅延が発生しました。
その原因は、コロナショックの状況によりアメリカ国内での不動産関係の業務の停止によるものだとしています。
1ヶ月から2ヶ月ほどの延長で投資家返済予定となっています。
コロナ禍での個人投資家の投資意欲は安全志向か
新型コロナウイルスの国内感染者数は、いったん小康状態に陥ったものの、2020年6月に入りまた上昇傾向にあります。
一方で、緊急事態宣言の解除により、日本国内の経済活動は徐々に活気を取り戻しています。
そんな状況下でソーシャルレンディング投資家の動きを見ていくと、クラウドバンクやSBIソーシャルレンディングはお金の募集に成功しており、実績のあるソーシャルレンディングサイトでは、これまでと同様の結果となっています。
利回りが1パーセントから2パーセントと低水準ながらも、Funds(ファンズ)では、抽選での募集でも満額を大きく応募が殺到しています。
しかし、上場企業グループの会社ながら、ソーシャルレンディングサイトとしての実績は少ないSAMURAI FUNDは、募集に苦戦している様子が伺えます。
また、クラウドクレジットは案件数、募集金額ともに伸び悩んでいます。
コロナショックの影響がまだ覚めやらない状況下では、個人投資家は運営サイトの実績や返済リスクを見定めながら、資産保全性の高い案件を中心に投資していっているようです。
この傾向はしばらく続くと思われます。
まとめ:2020年6月のソーシャルレンディング市場総評
2020年6月のソーシャルレンディング市場は、クラウドバンクの躍進もあり5月を回ることに成功しました。
各社の動向を見ると、大きく数字を伸ばしたサイト自体は少なく、クラウドバンクの動向に業界全体の市場規模が左右されたと言えます。
投資家心理は低リスクを好む傾向にあり、今後しばらくは利回りよりも収益の確実性と資産の保全性に優れた案件の需要が増していくのかもしれません。
ソーシャルレンディング会社側としては、無理なく返済できる案件を組成し、返済実績を積み重ねていくことが、成長につながっていくのではないでしょうか。
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